見ているだけだった背中 けれど今こうして、俺たちは戦っている 渋川難波が同世代の雄と並び立った日【Mリーグ2022-23観戦記11/25】担当記者:後藤哲冶

ならばと白鳥がツモ。
裏こそ乗らないが、4000オールでトップを争う2人に大きく近づいた。

勝負は南4局3本場へ。

2巡目の白鳥。
カン【4ピン】が埋まって、この形から打【8マン】
ここで対子手は見切り、【南】が重なればホンイツのルートへ。

対する渋川。
6巡目でチートイツのイーシャンテン。
しかしチートイツにするには手が重い。ピンズ上はドラなこともあって場に高く、【赤5マン】も浮いている。

【1マン】切り。
チートイツをここで見切る。
確かにテンパイにはチートイツが近いかもしれないが、欲しいのはテンパイではなくアガリだ。
最終形が必ず単騎になるチートイツよりも、仕掛けが自由に効くタンヤオへ。

「リーチ」

リーチ発声と共に、乾いた音が響いた。
白鳥のリーチは、【6ソウ】【9ソウ】待ち。
ツモって裏が乗れば、一気にトップ目。

そのリーチの直後。

もう一度、乾いた音が卓上に響いた。
河に強く放たれたのはなんとドラの【8ピン】

追い付いた渋川。出ていくのは先ほどと同じドラだが、今度は事情が違う。
自分のテンパイがリャンメンで、アガリが見えること。
自らの手牌にドラ赤が多くあり、白鳥の打点が低いこともあること。

――この手で決める。
渋川のそんな気合が感じ取れる。

譲れない。譲らない。

響く打牌の音。
走る緊張感。

枚数は互角。
勝負の、行方は――

 

数年前。
渋川は見ていた。

Mリーグという輝かしい舞台で、同世代のヒーロー、白鳥が戦う姿を。
時に自宅で、時に、解説席で。

いつかあの背中に追い付きたいと願いながら、届かなかった背中。
ようやく、ようやく――

――少しは、追い付けたのだろうか。

 

押し切った渋川が嬉しい2回目のトップ。
チームが苦しくなってきた局面だっただけに、嬉しさもひとしおだろう。

もちろん、麻雀という競技は1回の勝ち負けでどちらの実力が上かを判断することはない。
けれど、この舞台で白鳥との競り合いを制せたことは、渋川にとって間違いなく自信に繋がるのではないだろうか。

そしてまた、白鳥もこのまま終わらせることは無いだろう。
必ずリベンジのチャンスがあれば、格の違いを見せてやろうと息巻いているはずだ。

この激闘を終えて、同世代の2人がどんな言葉を交わしたのか、私が知る術はない。
けれど、まあ。

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