鈴木大介、麻雀界への黒船再来 #麻雀最強戦2022 【ファイナル 1st Stage】観戦記【A卓】担当記者 #東川亮

とは言え、このドラ押しはノータイム、一切の迷いがなかった。巡目は15巡目、トップ目から押す牌とは思えない。しかし、これを押すのが、

これをアガり切るのが鈴木大介なのだ。杉浦から出アガリして、5800は6400。その後、鈴木の親番は6本場まで伸び、親落ちした段階で、持ち点は6万点を超えていた。

大塚翼と杉浦まゆ、若手2人が最強戦で示した意地

鈴木が親番を続けるなかで、印象的なシーンがあった。東3局3本場。この局、杉浦にチャンス手が入った。タンヤオピンフドラドラ、高目【8ピン】をツモればイーペーコーがついてハネ満となり、一気に2番手まで浮上できる。ここは巡目が深くなっているからか、ダマテンに構えた。

直後、鈴木もテンパイ、タンヤオのカン【7ピン】待ち。

ダマテンを続けていた杉浦が3枚目のドラ【6ピン】を引き入れ、待ち変えの選択が生まれた。鈴木が6巡目に【4ピン】を切っていて【7ピン】はワンチャンス、やや盲点に見える。

より安全にテンパイを取りに行こうとすれば、【7ピン】で鈴木に放銃していたかもしれない。しかしここは、強く【6ピン】を切っていった。直前に大塚が【9ピン】を切っていて、【6ピン】【4ピン】3枚見えでワンチャンスになっている。そしてなにより、ダマテン満貫、ハネ満の可能性をより明確に追いたい思いもあっただろう。

そしてもう一人、大塚の我慢もすごかった。最終盤に【2ピン】を引いてテンパイするが、出ていく【7ピン】は鈴木のロン牌。

場に1枚も見えていない【7ピン】に気味の悪さを感じたか、ここはテンパイを取らず。

大塚は、最終手番で【4マン】を引いて再度テンパイするも、やはり【7ピン】も、そしてもう1枚のテンパイ打牌【5ピン】も切らなかった。【7ピン】は鈴木の、【5ピン】は杉浦のロン牌だった。

不服そうだ、当たり前だ。でも、この我慢が勝利につながることを、彼は目で見て、身を以て知っているのだろう。

劣勢で迎えた南2局、親番の杉浦にわずか5巡で先制テンパイが入る。ドラ1愚形待ち、リーチをかける打ち手も多そうな手牌。

杉浦はダマテンとした。リーチドラ1は、出アガリしても一発や裏ドラがなければ3900、決定打となるような手ではない。それを焦ってアガリにいくのではなく、さらなる高打点への変化を見た。満貫クラスのツモアガリになれば、一気に優位に立てる。

狙いの一つ、シャンポン待ち変化でリーチ。

安目ながら【1ソウ】をツモ、テンパネして2600オール。負けている親番で、一刻も早くリーチをしたい気持ちを抑え、手を育てる。杉浦も大塚も、麻雀プロとしての意地が感じられる打ち筋だった。

ドラの乗らない男、ももたんに訪れた僥倖

南2局1本場、点数を持っている鈴木は、とにかく局を進めていけばOKだ。手の内に2メンツあって自分のアガリが見える状況、オタ風のドラは早々に処理していく。

ももたんとしては自風のドラ、喉から手が出るほど欲しい牌が鳴けた。満貫をアガれば杉浦の逆転も現実的に見えてくる。

鈴木はももたんのアガリをアシストしにいってもいいように見えたが、ここは【9マン】のトイツ落としでやや受け気味に。ももたんがアガるのは歓迎だが、満貫手にこれ以上協力する気はない、ということか。

アシストはしないが、オリるわけでもない。ツモった【6ソウ】は現物だが、タンヤオがつくのでスライドの打【9ソウ】

これをももたんがポンしてテンパイ。

鈴木が【2マン】【5マン】待ちテンパイで追いつくも、ももたんのところに4枚目の【5マン】が来て、これを暗槓。

新ドラはなんとダブって【西】、ももたんの手がドラ6のハネ満に化けた。

【5ピン】【8ピン】は、テンパイ時点で山にたっぷり残っていた。ツモって3000-6000は3100-6100、再びももたんが2番手に浮上する。

ももたんは、仕掛けて鈴木から5200をアガった南1局以外は、ずっと丁寧に、我慢の守備を続けていた。焦って前に出ていたら、ここまで持ち点を残せていなかったはずだ。競技麻雀を続けていくなかで培われた忍耐が、「ドラの乗らない男」にドラを乗せたのかもしれない。

オーラスは仕掛けた鈴木による1000点のアガリで決着。A卓は鈴木とももたん、アマチュア2人の勝ち上がりとなった。

プロとして戦い、敗れた大塚と杉浦。2人はミスも含め、今できるベストを尽くしたように思う。まだ若く、先がある。この敗戦を糧に、もう一度最強位へと挑んでいただきたい。

2位通過となったももたんは、ファイナルの舞台でも慌てず騒がず、自分の麻雀を打ち切った。アマチュア最強位から、真の最強位へ。ももたんの競技麻雀道は、さらに未知なる領域へとつながっているようだ。

そして、下馬評通りの強さを見せつけた、鈴木である。3年前、麻雀界に突如として現れた黒船が、今回も思う存分に強さを見せつけ、2度目の最強位戴冠へと前進した。このモンスターを止めるのは誰なのか。

それとも、誰も止められないのか。

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