南3局2本場、をノータイムでチー。12巡を過ぎてメンツが一つもない手格好で、と持っているところから仕掛け、を払ってタンヤオに向かう。門前で手を進めてのツモ6回ではもう間に合わないという判断だと思われるが、現状ではトップ目で、手を短くすることを嫌う打ち手もいるかもしれない。東城の強気な姿勢がうかがえる鳴きだ。
萩原が東城の現物待ちをダマテンとして親番を蹴ろうとするが、東城もテンパイし、
すぐに亜樹から出て2900は3500。展開も東城に向いているように思えた。
しかし、南3局3本場では亜樹のリーチに対して好形テンパイで追いついてリーチをかけるも、宣言牌はどちらも捕まっていた。
リーチ一発ドラ、5200は6100。再び東城と萩原の差が詰まった状態で、オーラスを迎えることとなった。もちろん、亜樹も十分逆転可能な点差だ。
南4局、最初にテンパイしたのは松本。順位を上げるには役満ツモクラスが必要なため、ここは試合を終わらせにいった。ただ、それでもタンヤオドラドラ赤の8000と、打点は十分。
は山に残り2枚、そしてダマテンなら全員から打たれそうな牌だった。
東城の手が進んで1シャンテン。ターツオーバーとなっており、必ずどこかのターツを見切る必要がある。そして、は既に場に5枚も見えていた。自分のアガリを考えるなら、外すターツはもはや必然だった。
東城が目前にしていたトップは、萩原の元へと転がり込んだ。こんな結末があるのも、麻雀である。
「悔しかったけど、楽しかった」
試合後の東城は、笑顔だった。チームが厳しい状況にある今、トップを取り逃したことには、身を焼かれるような痛みがあったはずだ。けれども、この結果を受けてなおそう振り返れることは、彼女の強さを表しているように感じる。
スタッツを見れば分かるように、東城はよくアガり、よく放銃した。この試合の中心にいたのは、間違いなく東城だった。決して何もできなかったわけではないし、持ち味を生かした戦いは、ファンにも希望を与えるものになったはずだ。
フェニックスは、自らの身を焼いてよみがえるという。彼女たちが、このままで終わるはずはない。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。