1月12日、Mリーグ・EX風林火山は、新戦力獲得選考会「IKUSA」の開催を発表した。
https://twitter.com/EX_Furinkazan/status/1613445807021215746?s=20&t=VOaOLFrUlckKLMTHz3P-TQ
2年前に行われ、松ヶ瀬隆弥がMリーグ入りを勝ち取った「ドラフト会議指名選手オーディション」と違い、現時点ではMリーグ入りの確約が得られる大会とはなっていないが、Mリーグを目指したい、名前を売りたい麻雀プロにとっては、非常に大きなチャンスの一つであることは変わりない。今回はチームの藤沢晴信監督にインタビューを行い、「IKUSA」開催に至る思いに迫った。
-まず、「IKUSA」開催に至る理由について教えてください。
今シーズンのEX風林火山は、ファイナルに進出できなければ選手を最低1名は入れ替えなければいけなくなるシーズンです。
幸いにして今は(※1月13日時点)チームは好調ですが、チーム運営を行う上では、常に最悪のケースを想定しておかなければなりません。もし仮に、チームの成績、あるいはなんらかの事情で選手の退団が起きたとしても、それに備えておかなければいけないのです。
EX風林火山は基本的に、新しい選手はオーディションを開催して選ぶ方法を採りたいと思っています。その準備を考えたとき、この時期から企画をスタートさせておく必要がありました。
ただ、今回は3人から4人に増やすという前回と違い、優勝者を必ずドラフト指名する、というわけではありません。そのため、もし今シーズン後の入れ替えがなかったとしても、優勝者にはスペシャルスパーリングパートナー(SSP)として活動してもらう、という形を考えました。どっちつかずでわかりにくいですが、「シーズンオフに風林火山主催の大会を行う」というのが大テーマですので、その大会名を風林火山らしくIKUSAと名付けました。 大会の進行途中でSSP大会かオーディションかが決まるということになります。
-もし今シーズンオフに選手を獲得することになった場合は、「IKUSA」優勝者が指名されるのでしょうか。
その通りです。「IKUSA」は、現在は「SSP選考会」となっていますが、もし選手を入れ替えることになった場合には、その時点で「ドラフト指名選手選考オーディション」に切り替わるので、優勝者をドラフトで必ず指名します。
また、今シーズンの選手入れ替えがなかったとしても、以降3シーズンの間にオーディションが行われる際には、「IKUSA」優勝者には決勝シードが与えられます。もちろん、既に他チームに加入していた場合は権利が消失することになりますが。
-SSPは、どのような活動を行うのでしょうか。
スペシャルスパーリングパートナーという言葉の通り、チームの練習相手を務めていただくことになります。EX風林火山では毎月チームで練習会を行っていますが、諸事情で欠席する選手もいますので、そういうときに代わりに卓に入っていただくのが主な活動になります。
また、チームイベントなどにも参加していただくこともあります。優勝時の報酬を「100万円(税込)」としましたが、それはSSPとしての活動に対して先払いをする、と捉えていただければと思います。ただ、現時点では明確な活動内容は決めておらず、優勝者が決まったところで相談、と思っています。
-ある意味で、SSPを次期選手候補として囲い込むイメージでしょうか。
それは違います。あくまでも優勝した選手に対し、チームからそうした仕事をお願いするという形にはなりますが、もちろんその選手が他のチームに指名される可能性は十分にあります。実際、前回のオーディションで松ヶ瀬選手が他のチームから先に指名される可能性もあり得ました。なお、前回もそうでしたが、今回も優勝者がシーズン後のドラフトで指名された場合は、準優勝者が繰り上がることになります。
-今回、アマチュア大会を設けたことについては。
2年前のオーディションが非常に盛り上がる中で、アマチュア部門もあればうれしいのではないか、という声がありました。また、今回も全面協力してください麻雀HOLICさんは、昨年の麻雀最強戦でアマチュア予選の運営を行っており、ノウハウもあります。そうした諸々を鑑みて、今回はアマチュア大会も開催することになりました。
今回の「IKUSA」では、アマチュア部門優勝者はプロ予選を勝ち抜いた準決勝進出者と戦うことになります。こうしたシステムは、麻雀最強戦のレギュレーションをかなり参考にさせていただきました。なお、アマチュア部門で優勝し、「IKUSA」でも優勝した方は、アマチュアであってもSSPとして活動していただくことになります。
-この時期の「IKUSA」開催発表によって、SNSなどでは「EX風林火山は今シーズン後に選手を入れ替えるのではないか」という声もあります。
それも、誤解していただきたくない部分です。あくまでも今回はいろいろなケースに対して準備を進めるにあたり、逆算してこの時期の発表になった、というだけです。麻雀ですから今後チームの成績がどうなるか分かりませんし、過去には優勝してもチームを退団した選手がいました。そうしたイレギュラーにも、チームとして備えておかなければいけないのです。ただ、「今の時点で誰かを入れ替えることは考えていない」ということは、監督としてお伝えさせてください。
-いろいろな意見があるにせよ、この取り組みは、非常に狭き門であるMリーグ入りのチャンスであると共に、特に麻雀プロにとっては飛躍のチャンスになると思います。麻雀プロの方に向けて、メッセージをいただけますか。
Mリーグはレギュレーションの適用もあり、毎年新入団選手が入り活性化してきたと感じます。各チームそれぞれ指名基準があると思いますが、やはり風林火山としては前回のようなオーディション形式を採りたいと思いました。松ヶ瀬選手は予選と決勝の重要なポイントで役満を2回アガって優勝しました。そういう方は、やはり「持っている」と思うんですよね。勝ち上がってくる人、そしてMリーグで活躍できる人はそういうものがないといけないと思いますし、それを見極める最も良い方法が、オーディションだと私は思います。また、今回の「IKUSA」は、準決勝以降はABEMAで無料放送されます。たくさんの人に見ていただける、知っていただけるチャンスなので、ぜひこの機会を、いろいろな意味で活用してほしいなと思います。
実際、水面下で各団体に告知をしていたときから、個別でいろいろなお問い合わせをいただいています。また、正式リリース以降に、特に若いプロの方がSNSなどで意気込みを表明していただいていて、そうした熱い思いを寄せてもらえるのは本当にありがたいことです。また、今回は前回と違い年齢制限を取り払いました。なので、レジェンドの方々にも是非挑戦していただきたいです。
私が言うのもおかしい話ですが、参加される方には「風林火山負けろ! そしたら俺が入って来年優勝させてやる!」くらいの気持ちで臨んでいただきたいです。入るのが目標ではなく、あくまでMリーグで勝つことを目標とした、野心のある方に挑んでいただきたいですね。
-最後に、EX風林火山ファンやMリーグファンの方に向けても、メッセージをお願いします。
Mリーグ初年度から風林火山の顔として引っ張っている亜樹選手、前回の優勝請負人軍師・勝又選手、自らの手でMリーガーを勝ち取った超巨砲松ヶ瀬選手、今年は本来の実力が発揮できている瑠美選手、今のEX風林火山の4選手は余人をもって代えがたいそんなメンバーです。チームワークもよく優勝圏内にある、と感じています。優勝こそがファンの皆様への最大の恩返しと考えております。
しかし、Mリーグは一寸先は闇、万が一闇に落ちた場合のことも考えておかねばなりません。また負けちゃった、どうしよう。では済まされないのです。これが昨年の悔しい敗退から学んだことです。常に先のことと最悪の場合も考える、まさに麻雀の闘牌と同じです。このような取り組みにいろいろな声があることも重々承知しています。色々な思いが錯綜しながら最善の策、と考えたのがIKUSAです。是非とも注目、応援していただきたいです。そういった各チームの様々な取り組み自体もMリーグの一環として楽しんでいただければと思います。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。