だが何故だろう。
私はこのめくり合いを見ている時、決着がつくような気がした。
祈るように手を伸ばす。
ツモる手に力が入り、熱を帯びる。
……多井が自身の持つYouTubeチャンネルの配信で村上について語っていたことをご存知の方も多いかもしれない。
「もし麻雀の日本代表ができたとして、僕が選ばれなくても村上が選ばれたなら納得する」
多井は村上の能力をそれだけ高く買っていた。
もっと成績が出せる打ち手であろうこともわかっているはずだ。
それでも多井は村上の前に立ちはだかった。
それが、村上に対する敬意だから。
一牌の後先に文字通り人生を賭けてきた男達のめくり合いは。
多井の勝利で、幕を閉じた。
劇的で、感動的で。
それでいて残酷な結果が、静かに横たわっていた。
最大打点が満貫という小場を制したのは、パイレーツの頼れる船長小林剛。1試合目も瑞原がトップで連勝のパイレーツは3位に浮上。
決死の想いで挑んだ村上は、3着という結果に終わった。
ドリブンズのマイナスは600を超えた。かなり苦しい状況にはなっているが、それでも諦めることはしない。
今日の村上のように。
全員が最後まで最善手を模索し、選び続けるだろう。
以前、こんな声を耳にした。
昔からの競技麻雀ファンであれば、この入れ替えをかけた人間ドラマが、より一層感慨深く、感動的なものになる、と。
なるほど確かに、そうなのかもしれない。
私事で申し訳ないが、私は麻雀プロ歴が浅く、Mリーグが始まる以前から麻雀プロ業界を注視してきたかと言われると、そうではない。
だが、それでも。
今日感じたこの胸に焼き付くような感覚は、決して偽物ではない。
手に汗を握り、全身が滾るようなこの感覚は、紛れもなく本物だから。
この熱狂を外へ。
過去とか関係性とか、確かに大事なピースではある。
しかしそんな事とは無関係に。
一牌の後先に人生を賭け、魂を燃やし続ける彼らの姿が――
――狂おしいほど輝いて見えるのは、私だけだろうか。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924