そしてやっと、堀がペンを鳴いてフリテンイッツーのテンパイ。
余るもが4枚見えになってもう打ちやすくなっていた。
危険牌は決して打たず、見栄えは悪く安くとも。
唯一と言っていい、アガれる形を作った会心の手順である。
多井もここでテンパイ。
が3枚切れでやはりの場況がいいため、を残してのカンだ。
次巡に多井はをアンコにして単騎の6400変化。
どうなってるんだこれは──!!
2巡目のチートイツドラドライーシャンテンの場は食い荒らされ、自分以外が全員テンパイ。
は小林に当たり、は多井に当たり、は先ほどまで多井に当たりでやはり危険。
たろうは鮮血のを放った。
追い込まれた神の意地か、確かにこれが一番マシな牌だった。
そうして堀が──、舐めるようにフリテンのその牌を引き寄せる。
人を食ったような、フリテンイッツーのゴットー。
たろうがそのアガリを睨みつける。
小林と多井も、この局を制するのは自分だったのにと言わんばかりに、口惜しさを噛み殺す。
狂宴の残骸を卓に流して、一流たちの戦いがまた始まった。
無限に見ていたかったこの対局は、堀が逃げ切る格好でトップ。
たろうは3着でさらにチーム状況は厳しくなったが──、
そういった、全ての付随する環境や条件など私たちが忘れるほどに。
ただただ純粋で、濃密な勝負というものに。
酔い痴れた夜だったのではないだろうか。
日本プロ麻雀協会1期生。雀王戦A1リーグ所属。
麻雀コラムニスト。麻雀漫画原作者。「東大を出たけれど」など著書多数。
東大を出たけれどovertime (1) 電子・書籍ともに好評発売中
Twitter:@Suda_Yoshiki