前人未到の大記録、
強気なヴィーナス黒沢咲が
Mリーグの伝説に名を刻む
文・江嵜晋之介【月曜担当ライター】2022年11月7日
麻雀は誰に対しても平等なゲームだ。
麻雀歴が数十年のベテランは、先週覚えたばかりの初心者よりも配牌が良くなることはない。お金持ちと貧しい人でも同じことが言える。良い出来事・悪い出来事が平等に訪れるゲームだからこそ、その中の偏りに人はドラマを見出さずにはいられない。
Mリーグ2022レギュラーシーズン21日目。
この日Mリーグ史に残る大記録が生まれることを、いったい誰が予測できただろうか。
第1回戦
東家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
南家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
北家:黒沢咲(TEAM雷電)
東1局
この試合、黒沢のアガリから始まった。
リーチツモピンフ三色ドラの3,000-6,000。
先制リーチをかけた親番優の待ち(山に6枚)をかいくぐり、山に一枚しかいなかった高目をツモ。幸先の良いアガりを決める。
次に点棒が大きく動いたのは東3局。前局渋川・優に攻められながらも粘りのテンパイを入れ連荘に成功した親番のたろうがチートイツドラドラの闇テンを出アガる。
前順、狙っていたを見事重ね、単騎を選択。リーチ中の渋川から出アガり9,600点は9,900点を加点。トップ目の黒沢を追随する。
黒沢も負けじとアガり返す。
東4局の親番で、待ちのリーチをかけをツモ。
裏ドラ一枚の4,000オールをアガり再びたろうを引き離す。
今度はたろう。
南1局6本場にドラのが暗刻のチャンス手を入れ、5巡目にカンでテンパイ。
その後、親である優のリーチを受けるも、
ダマテンのままをプッシュし、
次巡、を引いてとのシャンポンに待ち替え。
そして上家渋川から打たれたリーチの現物のをチーして待ちに変化。
は山に4枚残っていた。をツモり2,000-4,000の6本場を決める。
熾烈なトップ争いが繰り広げられる中迎えた南2局、ここで事件が起きる。
タンヤオドラ3の仕掛けを入れていた南家のたろう。
絶好のを引きテンパイを入れるが、なんとを切ってしまう。
この打牌について、たろうは試合後のインタビューで、「ツモってきたをだと勘違いしていた」と説明していた。アガればトップになれるチャンスを目の前にして痛恨のヒューマンエラーだ。
直後、ラス目で後がない親番の渋川からが放たれる。本来たろうのアガりとなっていた牌だ。たろうは少考の末、これをチー。
すぐにを引き、カンでテンパイし直す。ただは3枚見えており手の価値は大幅に下がったと言っていいだろう。
そして恐れていた事態が起きる。親番の渋川からリーチ。
ドラ単騎のチートイツ。ツモれば6,000オールからの勝負手だ。は山に一枚残っていた!
しかし、渋川がツモってきたのは無情にもたろうの当たり牌。
満貫のアガリ逃しをしたたろうが結局は満貫を出アガり、黒沢を抜いてトップ目に立つ。対して渋川はマイナスからの放銃で持ち点が-10,000点を下回ってしまう。