神を討つのも、また人外── 鈴木たろうを屠る魔物たちの狂宴【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・1月27日】

1月27日(金)第2試合、今日までの赤坂ドリブンズの苦境を覆すために降り立ったのは、
ゼウスの異名を持つ鈴木たろうであった。

東2局1本場、たろうは早々にチートイツドラドラのイーシャンテン。

絶好の字牌を3種残し、正にインドラの矢を放つ瞬間を待つばかりである。

しかしこの卓で神を待ち構えていたのも、また人外の者たちであった。

北家のKADOKAWAサクラナイツ堀慎吾がこの手牌で序盤から生牌の字牌を連打。

マンズのホンイツを狙うなら字牌に色気を残したい手牌であるが、
すでにたろうのチートイツを警戒し、待ち頃の牌を先に散らしているのである。

このとき最もたろうと勝負になりそうなのは西家の渋谷ABEMAS多井隆晴であった。

カン【3ソウ】【3マン】【6マン】【9マン】のイーシャンテンだが、【7ソウ】を浮かせてソーズの愚形の解消ルートも残している。

多井の切った【7マン】に堀がペンチャンで食いついて場が動き出す。

イッツーだけを狙って、打【4マン】
打点はないが、アガリを見るならイッツーしかない。
安全牌を抱え、決して無理は通さず、ただ淡々と手を進める。

続いてこれに食指が動いたのは、東家のU-NEXT Pirates小林剛だった。

やはりたろうのチートイツは意識していたものの、
堀の切った後にダブ【東】が重なって、自己の打点のために確保。
受けの広いクイタンより、たろうが余すかもしれぬ【東】の出を待つことにした。

堀はまだこの形。
【3ソウ】は下家の小林に今鳴かれる牌、【2ピン】はまず全員の安全牌で、
たろうのチートイツに危険となる場一の【白】から切っていく。

小林は【7ピン】がアンコになってしまい、いったんは役なしのテンパイ。
無論【東】を鳴きたいところであるが、実はただそれを待っていただけではない。

ペン【7マン】チーの堀がもしチャンタ仕掛けであれば、アンコの【7ピン】はネックかもしれぬ。
よって堀の上家の多井が【7ピン】を切るようなことがあれば、
ダイミンカンして堀のチーを阻止、あるいはリンシャンでの【3ソウ】【6ソウ】ツモまで目論んで準備していたという。

するとあろうことか、堀の方も役なしとなる【3マン】を持ってくる。

が、全く逡巡もせずツモ切り。
こうしておかないと安全牌を保ったままでの【6マン】チーができないし、持てば危険になるだけだ。

魔物たちが、神の堂々たる手を執拗に潰しに来る。
不遜にも、役なしで。

多井が【7ソウ】【8ソウ】をくっつけ、構想通りに場況のいい【6ソウ】【9ソウ】受けにシフトさせる。

ここで小林が【6ソウ】を持ってきた。もちろん役はないのでアガれない。
さすがにこれは【東】を落とすのではないかと思われたが──、

小林が場を見渡して、切ったのはなんと【4ソウ】であった。

確かにこの状況。
ソーズの景色がかなり良く、【5ソウ】【6ソウ】縦重なりは十分期待できる。

正に我が意を得たりと、次巡の【5ソウ】ツモで役ありのテンパイ。

【東】での出アガリは当然可、ツモアガリなら三暗刻がついてどちらでもOKという凄まじい手になった。

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀戦術シリーズ新刊/