悲願へ向けて突き進め 松本吉弘、周り道の先にある勝利の栄光【Mリーグ2022-23ファイナル観戦記5/11】担当記者:東川亮

1300-2600ツモ、あるいは松本から3200直撃がトップ条件の瀬戸熊。赤含みの1シャンテンで、【4ピン】を切ってイーペーコーを捨てた。不自由で赤も出ていきかねない形にするより、ドラと赤をしっかり使い切ろうという手組み。こちらももう、間違えられない。

誰もがそれぞれの狙いを遂行しようとする中で、最初のテンパイは松本だった。【發】でしかアガれない形だが、テンパイしていること自体の価値は大きい。

アガらなければいけないのはこちらも同じ。親番の勝又がリーチをかけた。2シーズン前の優勝の立役者がファイナル3日目にして初出場、そして連闘。初戦は3着だっただけに、このままおめおめとラスを食ったまま控え室に帰るわけにはいかない。

松本としては、ここで決めきりたいのはやまやまだが、待ち自体はマックスで2枚と心許なく、すでに山にない可能性もある。リーチの一発目は2枚切れの【西】で押しやすかったが、親リーチに振り込むわけにもいかず、難しい選択が迫られるはずだった。

だが、勝敗はすぐに決した。【發】はそこに、積まれていた。

松本がアガりきってトップを死守。「ショーマツ」コンビで、デイリーダブルを達成した。

試合直後は厳しい表情を崩さなかった松本だったが、

卓を離れるときに、ようやく笑顔を見せた。

ファイナル3日目を終え、ABEMASは2位の風林火山に142.1ポイントの差をつけた。冒頭でファイナルを麻雀にたとえたが、現状のポイントを麻雀の持ち点に置き換えてみると、ざっくりとではあるが、このような数字になる。
※4チームの平均スコア「112.95」を25000点として計算

東3局終了時
ABEMAS:50200
風林火山:18700
麻雀格闘倶楽部:17800
雷電:13300

もちろん、ABEMASが優位なのは確かだ。ただ、まだ東3局が終わったばかりである。これくらいの点差から逆転するケースなど、それこそMリーグではすぐに数えられないくらいたくさんあった。はたしてABEMASがこのまま逃げ切るのか、他チームの追撃はあるのか。この先の戦いも楽しみだ。

楽しむと言えば、この日プレーヤー解説を務めた鈴木優仲林圭(ともにU-NEXT Pirates)の2人が、ファイナルの戦いを非常に楽しんでいたのが印象的だった。鋭い解説を交えつつ、勝負どころでは実況の日吉辰哉に負けじと大きな声で一喜一憂していた。
彼らとて、この舞台で打ちたい思いは強かったのは間違いない。しかしそれでも、ファイナルを見ているときはきっと、我々ファンと一緒なのだ。ファイナルの戦いは、残すところあと5日。この対局の熱、面白さが、一人でも多くの方に届いてほしいと思う。

 

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