1300-2600ツモ、あるいは松本から3200直撃がトップ条件の瀬戸熊。赤含みの1シャンテンで、を切ってイーペーコーを捨てた。不自由で赤も出ていきかねない形にするより、ドラと赤をしっかり使い切ろうという手組み。こちらももう、間違えられない。
誰もがそれぞれの狙いを遂行しようとする中で、最初のテンパイは松本だった。でしかアガれない形だが、テンパイしていること自体の価値は大きい。
アガらなければいけないのはこちらも同じ。親番の勝又がリーチをかけた。2シーズン前の優勝の立役者がファイナル3日目にして初出場、そして連闘。初戦は3着だっただけに、このままおめおめとラスを食ったまま控え室に帰るわけにはいかない。
松本としては、ここで決めきりたいのはやまやまだが、待ち自体はマックスで2枚と心許なく、すでに山にない可能性もある。リーチの一発目は2枚切れので押しやすかったが、親リーチに振り込むわけにもいかず、難しい選択が迫られるはずだった。
だが、勝敗はすぐに決した。はそこに、積まれていた。
松本がアガりきってトップを死守。「ショーマツ」コンビで、デイリーダブルを達成した。
試合直後は厳しい表情を崩さなかった松本だったが、
卓を離れるときに、ようやく笑顔を見せた。
ファイナル3日目を終え、ABEMASは2位の風林火山に142.1ポイントの差をつけた。冒頭でファイナルを麻雀にたとえたが、現状のポイントを麻雀の持ち点に置き換えてみると、ざっくりとではあるが、このような数字になる。
※4チームの平均スコア「112.95」を25000点として計算
東3局終了時
ABEMAS:50200
風林火山:18700
麻雀格闘倶楽部:17800
雷電:13300
もちろん、ABEMASが優位なのは確かだ。ただ、まだ東3局が終わったばかりである。これくらいの点差から逆転するケースなど、それこそMリーグではすぐに数えられないくらいたくさんあった。はたしてABEMASがこのまま逃げ切るのか、他チームの追撃はあるのか。この先の戦いも楽しみだ。
楽しむと言えば、この日プレーヤー解説を務めた鈴木優・仲林圭(ともにU-NEXT Pirates)の2人が、ファイナルの戦いを非常に楽しんでいたのが印象的だった。鋭い解説を交えつつ、勝負どころでは実況の日吉辰哉に負けじと大きな声で一喜一憂していた。
彼らとて、この舞台で打ちたい思いは強かったのは間違いない。しかしそれでも、ファイナルを見ているときはきっと、我々ファンと一緒なのだ。ファイナルの戦いは、残すところあと5日。この対局の熱、面白さが、一人でも多くの方に届いてほしいと思う。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。