余りにも残酷すぎる。桜のアガリ牌だった。
「まだ終わってないぞ、にいなの親番!」
自らを鼓舞するように。
最後まで明るく朝陽は配牌を迎え入れた。
リーチ棒と2600の失点で、朝陽は4着になっている。
このままでは終われない。
しかし最後の親番でも、朝陽の想いとは裏腹に、或世からのリーチを受けてしまう。
「ここはもう押すしかないんで。押していきましょう」
をプッシュ。
ボロボロになりながら前に進む。
少しでも良い結果を持ち帰るために。
次巡掴んだ。
これも自分の手牌には不要な牌だ。
切るしかない。
切るしかないのだが――
このが。
開幕日グラディウスの3連ラスを決定する放銃牌になってしまうのだった。
トップを獲得したのはチームゼウスの桜凛月。
監督不在の中で連闘、そしてチームに勝利を持ち帰る最高の結果に。
これでゼウスのトータルポイントもプラスになった。
2着は或世イヌ。もちろんミスもあったが、それを補って余りあるセンスと、熱い気持ちで大健闘の2着。
試合後の検討配信では「あので放銃するの神域リーガーで或世だけだよ」となんとも辛い言葉を受けていたが、強く生きて欲しい(?)
3着は咲乃もこ。勝負手の5枚山をアガれていれば、また違った展開だったかもしれないがそれが麻雀。
悔しい結果ではあるものの、チームはプラスで今日を終えることができた。
そして、この日まさかまさかの3連ラススタートとなってしまったグラディウス。
しかしその控室は、決して沈んでばかりではなかった。
「完璧なチームワークで444だから。ウチが一番良いチームまであるよね」
「うち皆しっかり打ててるから。今日いたどのチームよりも、ウチが優勝した方が面白いから」
もちろん、渋川はチームメンバーを元気付ける意味合いもあると思う。
けれど確かに、神域リーグは始まったばかり。
グラディウスのメンバーは誰1人として諦めてなどいない。
朝陽は最後まで明るかった。
悔しさはあると思う。
けれど悔しさが募った分だけ、喜びは大きくなる。
1年間努力し続けて、ようやくたどり着いた夢の舞台なのだ。
朝陽の笑顔を、心からの喜びを、聞きたい。
そう思うファンは、僕だけではないはずだ。
まだグラディウスの槍は、心は折れていない。
朝陽にいなの挑戦は始まったばかりなのだから。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924