神は細部に宿る 勝敗を分けた、黒沢咲の繊細な選択【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 12/22 第2試合】担当記者 東川亮

神は細部に宿る 

勝敗を分けた、

黒沢咲の繊細な選択

文・東川亮【バックアップライター】2025年12月22日

大和証券Mリーグ2025-26、12月12日の第2試合は黒沢咲がトップを取った。

黒沢は「セレブ麻雀」と称される門前高打点進行が持ち味の打ち手。

かつては1桁パーセントという驚異的な数字を記録した副露率こそ試合終了時点で15パーセント台となっているが、それでも全Mリーガーで最低の数字だ。

そんな黒沢のトップといえば、満貫ハネ満を何発も決める快勝、あるいは土壇場での逆転勝利をイメージする方も多いかもしれないが、この日の黒沢のアガリは東場のたった1回のみ。

グラフが示すように最高到達点が33000点、ロースコアゲームを逃げ切るというゲームはセレブのイメージとはかけ離れているように見えるが、そこには勝利を手繰り寄せる、黒沢の繊細な選択があった。

第2試合

東家:黒沢咲(TEAM雷電) 
南家:仲林圭 (U-NEXT Pirates)
西家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)

黒沢のこの試合唯一のアガリが生まれたのは、東3局

この局はなんとわずか2巡でチートイツのテンパイが入った。

【2ソウ】はそこまで悪い待ちには見えず、即リーチもありそうだったが、黒沢はダマテン。即リーチ前提なのであれば2枚ある【2マン】の外側【1マン】を残す選択もあったと思われ、そういうストレートな手組みをしないのも黒沢らしい。なんなら、ここでのチートイツのみ・1600点は早い巡目なら見逃しまであるのではないかと思ったくらいである。

この【白】を残すところが「セレブ麻雀」全開という感じだ。見ているのはもちろん、この手のマックス、四暗刻【白】を残すことでいったんノーテンに戻ってしまうが、それも辞さずの構えはなんとも見ていて面白い。

そして、自身でツモ切っている【6ソウ】のスジ【3ソウ】を引き入れ、ここでリーチを選択。

黒沢の奇妙な捨て牌から、仲林もチートイツは読みスジに入れていた。しかし、それであれば生牌【白】よりいい待ちとは何か。

少なくとも【3ソウ】ではない・・・そんな思いで切った牌にロンの声。

テンパイから暗刻を作って1シャンテン戻し、そこからのリーチは名手・仲林の読みも狂わせた。

リーチチートイツ、そこに裏裏を乗せての8000は、まさにセレブ麻雀の真骨頂といった感じ。

ただ、この試合の黒沢について語りたいのは、この後のアガリにならなかった局の振る舞いについてである。

南1局、親番の黒沢は【3ソウ】を切れば役なしとはいえテンパイというところで、【8ソウ】を切ってテンパイ外し。ラフな親リーチでの押さえつけは、セレブには似合わない。良形変化はもちろん、タンヤオ変化やドラ引きなどでの打点アップを狙う。

その後、【1ソウ】【發】と仕掛けていると仕掛けているたろうが【南】を手出し。ホンイツテンパイであればいよいよきな臭くなってきているところだが、

手牌の形が良くなった黒沢は、スッと【6ソウ】を打ち出した。テンパイすれば【3ソウ】【4ソウ】も打っていく構えか、ここはかなり思い切った一打。ソーズそのものが余ったわけではないため、まだ間に合うという判断か。

その後の【7ソウ】で迂回、巡目も深くなり、さすがにリスクを負うには見合わないと判断したのだろう。この局は流局で終わるが、黒沢の押し引きが面白い1局だった。

南3局3本場には、終盤に【3マン】【6マン】待ちの役なしリャンメンテンパイ。ただ、待ちは場に見えているだけで6枚と、全くもっていい待ちではないため、ここはダマテンとする。

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