ほぼ優勝の望みがなくなった私が、優勝争いに割って入っていいものか。
「目無しは邪魔するな」
「どう打っても誰かに影響を与えるのだから、自分の可能性を追うべきだ」
これは、プロにとって永遠のテーマであり、正解は未だに存在しない。
逢川は力なくを抜いた。
そして直後に→とツモってきたのだ。
(浮いている牌も通っていた)
「1回戦なら切ってた」
「自分が親なら切ってた」
「志岐さんが押してなかったら切ってた」
敗者の弁で、悔しそうにまくしたてる逢川。
今日は彼女の日ではなかったということだ。
徹底して芽を潰す
追いすがる志岐からリーチが入る。
それを受けた一井の手牌。
2シャンテンで戦えそうにない。
安全牌もないが、1枚見えているのトイツを落とせば事足りそうだ。
だが、一井は
なぜか生牌のを切ったのだ。
見落としか?
「ポン」
その疑問は、逢川の声によって一瞬で氷解した。
一井は逢川に鳴かせたかったのだ。
こうすることでライバルの一発が消え、逢川の手が進む。
で志岐に放銃してしまうリスクをはらんでいるが、志岐は普通の捨て牌で、宣言牌は自分が切っている3枚目である。手は整っている可能性が高く、チートイツの可能性は低い。
「1000は1100オール」
アガったのは逢川だったが、裏で暗躍したのは間違いなく一井。
芸人みたいな格好をして、実はマフィアだったのか。
オーラス
こうして、志岐を除く三つ巴の状況でオーラスを迎える。
志岐は離れたラス目だが、意外にこの点棒状況は悪くない。
一井が三着目だからだ。
このまま終わると、素点と順位ウマで40pt差をつけられてしまうが、最終戦トップを取ればかなり逆転できる。
これがよもや一井の逆転トップとなれば100pt以上の差になってしまい、厳しい条件をつきつけられる。
できれば自分がアガリたいが、このまま終わるのもベター。
そう考えた志岐だったが、無情にも一井にテンパイが入る。
待ち。でイーペーコーがつくがでは役がない。
ここは決着をつけるためのリーチか。
一井は考える。
リーチを打って逢川がオリ、絶対オリない志岐との1on1に負けるのが最悪のケースだ。
ここはの出アガリこそできなくなるものの、ツモと出アガリで逆転を狙いつつ、が出たときにポンできるように…
ダマに構えたほうが優勝確率は最大になるのではないか。
三ヶ月は長かった。
顔を合わせるメンツが次第に減っていき、残った者同士での絆のようなものが芽生えはじめた。
だがもう大丈夫、あと少しだ。
すぐにが出て5200は5500のアガリ。
これで志岐にトップラスかつ素点も必要な条件を突きつけることに成功した。
6/6回戦