【 #神域リーグ2023 第6節第16試合観戦記】それでも皆が待っててくれた 助けてくれた、だから 或世イヌは応えたい【文 #後藤哲冶 】

「これは行こう」

追いかけリーチ。
このまま見ているだけではトップは取れない。
勝負に行く必要があると判断。

これを勝から討ち取った。
5200のアガリでひとつ抜けたトップ目で、南3局の親番を迎える。

或世に大物手が入った。
4巡目にして完全イーシャンテン。【3ソウ】【5ピン】と引けば三色までついて6000オールまで見える手だ。

「頼む、リーチさせてくれ……! 手進んでくれ……!」

或世が祈りを込めて叫ぶ。
ただひたすらにトップを欲する或世の心からの叫び。

引き入れるは絶好の【赤5ピン】
何か言葉を発するよりも先に、或世の手はリーチへ伸びていた。

これさえ決まれば、もうトップは確実と言って良い。
必死に或世がトップへと手を伸ばす。結果は――

朝陽への、1000点の放銃だった。
まだ、トップを決めることはできなかった。
或世のすぐ目の前にトップは見えているのに、ゴールまでが遠い。

それでも或世は冷静だった。

「安かったら良い。むしろ局は進むからナイスナイス!」

そう、これであと1局。
或世のトップはまだ目の前に残っている。
オーラスだ。

或世がこの中からポン。
アガりさえすれば、トップ。
初トップは自ら決める。覚悟の【中】ポン。

スムーズに【4ピン】【3マン】と鳴けてテンパイ。
【2ソウ】【5ソウ】のリャンメンテンパイは、この巡目にしては最高と言って良い。
アガリ牌は山にたっぷり残っている。或世がトップを獲得するのは、時間の問題に見えた。

更に、もうオリられない勝の手に、【2ソウ】が浮いていた。
この時点で、或世は【2ソウ】【5ソウ】の他に、勝がチーをする【3マン】【6マン】【5ピン】【8ピン】を持ってきても、アガリ。
勝がアガるには、自力でテンパイになる【3マン】【6マン】【5ピン】【8ピン】を引かず、更に或世からも出ない間に、【2ソウ】を重ねるという道しか残っていない。
視聴者の大半が、或世のトップを確信した、そんな状況。

その細い糸を、勝が通した。
まさかまさかの【2ソウ】ツモ。これで勝が、一旦放銃の未来を回避すると。

【4ピン】を暗刻にしてのテンパイ……!
細い細い糸を通して、勝がテンパイ。親番を繋ぐため、着順を上げるため。必死に勝も食らいつく。
勝と或世。この意地のぶつかり合いは――

「くっそぉ……! 終わらせてくんねえか……!」

勝が制した。5800のアガリ。
或世のトップは、もう手の届きそうなところにあるのに、一歩、いや半歩届かない。
最後のひと押しが、永遠にも思えるほど遠い……!

このアガリで、第16試合は全員がトップを狙える混戦へと突入する。
南4局1本場だ。

或世が、勝から出た【3ソウ】で少考に入る。
ポンして【9マン】【8マン】を落とせば、タンヤオへ移行できる。
しかし【9マン】【8マン】は親の勝に通っている牌であり、そこを落とすと防御力は果てしなく0に近い。

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