たった2枚
そのほんの少しの幸運は
手を伸ばし続けた
咲乃もこの掌(てのひら)に
裏ドラ。
それはリーチした者のみが見る権利を得ることのできる追加報酬。
1枚も種類の被りのないピンフ手のリーチであれば、裏ドラが乗る確率は30%前後と言われており、1枚ドラが乗るのはそう珍しい話ではない。
しかし、この裏ドラに悩まされている打ち手が、神域リーグに1人。
咲乃もこだ。
彼女は去年の神域リーグから参戦しているにも関わらず、この神域リーグの舞台で裏ドラが乗ったことが無かった。
今年の第4節で初めて裏ドラがのったものの、着順には影響しない、あまり裏ドラに価値が無い状況での1枚だけ。
裏ドラが乗らないのもそうだが、それ以上に咲乃はここまで苦しい展開を強いられてきている。
決意を新たに臨んだ前節も、ハコ下のラスに沈み、個人成績はここまで-144.8で個人18位。
人1倍努力をする咲乃だからこそ、ここまでの自分の成績には相当な悔しい想いがあるだろう。
負けが込みすぎて、牌譜検討が上手くできない日もあった。
それでも、翌日には元気に麻雀を打つ咲乃の姿が常にあった。
……努力を続けても、幸運は、必ず訪れるとは限らない。
けれど、手を伸ばし続ける事は幸運を掴む可能性を高くする。
だから、咲乃は今日も、手を伸ばす。
ファンが聞きたいのは、咲乃の元気な「こんもこ」だから。
第19試合
東家 咲乃もこ (チームアトラス)
南家 天宮こころ (チームゼウス)
西家 白雪レイド (チームアキレス)
北家 風見くく (チームグラディウス)
東1局
親番の咲乃がこのから仕掛ける。
はドラ表示牌でもうこの1枚しかない。打点はないが、1度アガって親番を継続させる狙いのポン。
呼応するように、白雪が自風のをポン。
こちらも打点があるわけではないが、このかわし手を得意とするのが白雪だ。
東1局から旧Aランク同士の仕掛け合いになる。
テンパイこそ白雪が先だったが、ここは咲乃が制した。
白雪から3900のアガリ。
待ちが良かったことから、咲乃はの大明槓まで考えていた。
まだ東1局ではあるが、咲乃が冷静に打てていることがよく分かる。
東2局
天宮が僅か3巡目にしてテンパイ。待ち取りはカンかカンで選べる形。
の方が枚数が多いが、天宮はここはを選んだ。
ヒントの少ない序盤のリーチは、スジの牌が出やすい。
見た目枚数は少なくても、こちらの方がアガリがあると天宮は踏んだ。
そこに追い付いたのが白雪。
リーチに対して周りながら、見事勝負手のテンパイに辿り着いた。
は、先制リーチの天宮の現物待ちだが。
「これ出てないってことは山に相当あるな」
ここはリーチ。天宮の現物が他家から打たれていないことから、山に残っていると読んだ。
実際その読みは当たっている。は、山にまだごっそりと残っていた。
「それだ~! レイドぉ~!」
それでも、ここを制したのは天宮だった。
白雪からを捕まえて2600のアガリ。