【 #神域リーグ2023 第9節第25試合観戦記】咲乃もこが耐え抜いた先 真夏の青空に咲いた 力強き華【文 #後藤哲冶 】

2度の流局を挟んだ、南2局2本場

咲乃の手に役牌【白】の暗刻が入った。
供託が2本あるこの状況では、大きなアドバンテージ。カン【3マン】から仕掛けていく。

テンパイが入った。単騎テンパイ。枚数は同じなので、より外側かつ、場の状況が良い【8ピン】単騎に受けそうだが。

咲乃は【4ソウ】単騎に受けた。確かに今この瞬間は【8ピン】の方がアガれそうだが、【4ソウ】を残すと変化がある。
上家から出た【5ソウ】をチーしての【6ソウ】【9ソウ】テンパイや、自力で【3ソウ】【5ソウ】を引いての変化が嬉しい。
ここは【4ソウ】単騎に。

これが功を奏した。そのまま【4ソウ】ツモだったが、最適解を選んだ咲乃へのご褒美。
1300、2600の加点に供託までついて、トップ目へ返り咲いた。

迎えた南4局オーラス。

咲乃の配牌。【中】が重なったことにより、アガリへの道筋は見えた。

「ポン!」

時間はかかったが、その分手形を整えることができた。
咲乃が【中】をポンしてイーシャンテン。

【1ソウ】をチーできて、これでテンパイ。アガれば、トップ。

「トップとりたい……!」

絞り出した声は、まだ震えが残っていた。
あと少し、あと少しでトップが手に入る。

ただ、そう簡単には終わらせてくれるはずなどない。
ここにいる全員が、トップを欲しているのだから。まずは渋谷がリーチ。ツモって裏が2枚乗ればトップ。
この形は通常よりも、裏ドラが2枚乗る確率が上がっている。

その渋谷のリーチ宣言牌【1ピン】に飛びついたのが、誰よりもトップに貪欲な男、たろう。
リーチ棒が出たことで、たろうもアガリトップに。【6ピン】【9ピン】待ちで追い付いた。

退路は無い。オリてノーテンでも、たろうがテンパイなら捲られてしまう。
覚悟は決めた。元より、渋谷のリーチには押すことを咲乃はこの局の最初から決めていたのだ。

なによりも、チームにプラスを持ち帰るために。
シーズン開始から、耐えて、耐えて、この半荘も、トップ目からあの【8ソウ】放銃で3着に落ちても尚、耐え抜いた彼女に待っていたのは。

青空に咲く、満開の向日葵だった。

4着に緑仙。結果こそ悔しいものだったが、リーチに行けた判断など、好材料もたくさんあった。
チームはまだまだプラス。優勝に向けて、切り替えて欲しいところ。

3着に渋谷ハル。配牌こそ良かったものの、絶望的なまでにツモが効かなかった。
レギュラー最終戦となった渋谷だったが、心から神域リーグを楽しんでくれているのが配信越しに伝わってきた。
最後まで、このお祭りを楽しんで欲しいと思う。

トップに、咲乃もこ
連投を終えて楽屋に戻ってきても、その姿勢を村上監督から褒められていた。

「今までリーチを打って、ダメな結果もたくさんあったけど、それでも打ち続けたことが偉いんだよ」

麻雀は、たとえ正解を選んだとしても結果が伴うかわからないゲーム。
時に理不尽な結果に見舞われ、投げ出したくなる日もある。
咲乃は今シーズン、悔し涙を流しながら反省した日もあった。

……必ず、結果がついてくるとは、限らない。
けれど、努力を続けた者だけが、トップの確率を最大限にまで高めることができる。

レギュラーシーズンは佳境。
咲乃の復調は、アトラスにとって紛れもなく追い風だ。

「こんもこー!」

この元気に響き渡る声が。
セミファイナル、そしてファイナルでも、聞けることを願って。

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