麻雀は運のゲーム。それは、この神域リーグ主催者である天開も良く知っている。
それでも、運を掴み取る可能性は、自分で広げるものだと知っているから。
長く暗いトンネルだった。
天開が折れずに必死に進んだ先に――
「よっしゃあああ!!」
天高く突き上げた拳。
大仕事をやってのけて溢れ出た咆哮は、地の底から這いあがった何よりの証拠で。
天開司が光を浴びるこの瞬間を――全神域リーグファンが待っていた。
3位に、或世イヌ。
3位にこそなったが、内容は素晴らしかった。初登板からの成長度合いで言えば、間違いなく或世が一番成長しただろう。
悔しい想いは、ファイナルで是非ぶつけて欲しい。
2位に、鈴木勝。点棒を失っても、我慢するときにしっかり我慢して、親番で一撃決めて2着。
チームの通過条件を踏まえた、盤石の打ち回しだった。ファイナルにも弾みになる、良い2着だったと思う。
4位になってしまったのは、ゼウスの桜凛月。
インタビューに応じたその声には――涙が混ざっていた。
悔しいと思うのは、桜がそれだけの努力をしてきたから。
麻雀の内容も、間違いなく胸を張って誇って良い物だった。
「……妹が、仇取ってくれるんで」
絞り出した言葉は、チームメイトであり、妹のルイスへ託す言葉。
あとは、ルイスに託そう。桜の意志は、想いは。視聴者に、ファンに、伝わったはずだ。
トップは、大仕事をやってのけた天開司。
放送終了後自らの雑談配信で、「この半年は地獄だった」と、天開はそう語った。
自らの私設リーグでこれだけ打ちのめされたのだ。麻雀から離れることはできず、苦しい想いをしていたのは間違いない。
それでも、この半年間、天開が投げ出したり、麻雀への姿勢を変えることは絶対になかった。
絶対にトップを持って帰るんだという気概が溢れた打牌も、シーズン中に沢山あった。
そう貫いて来たからこそ、この大一番でのトップという、最高の結果を持ち帰られたのだと思う。
あの日、泥にまみれ、失意の中牌譜を眺めていた債務者は今――
最高の輝きの中で、麻雀を打っている。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924