西原理恵子 & 山崎一夫 雀荘経営なら店に泊まり込むつもりで!


雀荘経営なら
店に泊まり込むつもりで

●学生はアルバイトをしろ。
●サラリーマンは、残業代を稼ぎつつ、スキルアップを目指せ。
●主婦もパートに出るべし。
●自営業は生き残りを賭けて、他人の2倍働こう。
●クリエイタ指向も諦めるな。

団塊の世代やそれに続く私たちの世代は、列挙したような前傾姿勢で仕事をする傾向が強いようです。

私は学生時代に雀荘の雇われマスター(店長)をやって、けっこう儲かりました。

給料は当時の初任給の2倍くらいでしたが、他にライターなどの副業があったので、たぶん3倍くらいだったと思います。
ただし、給与所得者なのに、広告やイベントなどの経費は自腹だったので、最初のうちはタダはたき以下の赤字でした。
給料取りとはいえ、半自営業みたいなものです。

私は雀荘の隣にある事務所に住んでいたので、アパート代や水道光熱費屋や通信費はタダでした。
生活費の中で、一番支出が多い住宅費がタダなのは助かります。

雀荘の従業員は、昼間はおばさん一人で夜は私一人。
週末は15卓が満卓になるので、日払いのアルバイト君を雇います。

それも、忙しくなった時だけ、バラ打ちで遊んでいる学生に頼むんだから、労働力に無駄がありません。
仕事の増減量に合わせて、労働力を供給するんです。

●労働力を固定費にせずに、変動費化して、単位時間あたりの労働密度を上げる。
●昼間のおばさんは労働密度が低いので、カレーを作って貰い給料も上げました。

忙しい時間帯の、バラ打ちの人数合わせに私は入らずに、近くに住んでいたり、サウナにいる常連さんに、電話をかけました。

「いいよ、行ってやるよ。その代りビールをオゴれよ」

長く遊んで疲れたら、ビールを飲みながら一休み。

「俺は座卓のほうで寝てるから、メンツが足りなくなったら起こしてくれ」

その店は掘りごたつ式の座卓があり、冬は足を突っ込んで、暖かく寝られるんです。
当時、中年女性の常連さんで大ママと呼ばれていた人がいました。

「やっちゃ場(野菜市場)に行く前に起こしてね」

その女性は、元もとは深夜スナックのママだったそうですが、引退してからは、同業のスナックの仕入れを何軒かまとめて引き受けてました。

酒を飲むのが仕事の、深夜スナックのママ達が、仕事明けに仕入れに行くのはキツい。
その代行というすばらしいアイデアです。

「山ちゃん、もっと安くビールが仕入れられる所を紹介しようか?」

私にも声がかかりましたが、もちろん大ママにはバックマージンが入ります。

現在は、買い物代行や、カー・シェアリングやカウチ・サーフィンなど、ITを駆使したマッチング・ビジネスは大盛況ですもんね。

 
1店舗なら儲かっても
店が増えると赤字になりがち

先の雀荘経営が成功したのはいいんですが、会社が儲かり過ぎて、大家さんが賃貸契約を更新してくれない、という非常事態になってしまいました。

「私が自分で経営するから、店を返せ!」

って言うんだから凄いですよね。

私のボスは他にパチンコ店などを経営していたので、あっさりと承諾。

「ヤマは船橋の新規出店のパチンコ店の2階で、雀荘をやってくれないか」

社長の配慮はありがたかったんですが、それを機に弁当店のフランチャイズで独立することにしました。

大家さんが私たちから取り上げた雀荘ですが、一年もしないうちに倒産し、その後しばらくテナントが入らずに苦労したそうです。

小さな商売は独特のコミュニティが構成されているので、運営には向き不向きがあるようです。

雀荘たぬが創業した15年ほど前に、近くのスナックのママがフリー麻雀で遊びに来てました。
美人で気立てもいいので、スナックは大繁盛でした。

私もそうですが、店が1軒繁盛すると、

「もう1軒出すと2倍儲かるのでは?」

と言う錯覚と誘惑にかられるようです。
ママも2軒目を近くに出しましたが、かなり苦労しているように見えました。

「ママ今日はこっちの店にいないの?」

特にスナックでは、お客さんはハコ(店)に付くんじゃなくて、人に付くのが普通です。

●投資資本が2倍になって
●労働時間が5割増し
●利益はほとんど増えず

だったそうです。

私の場合はもっとひどくて、最初の1店舗だけの時が一番儲かって、その後の投資効率はどんどん落ちる一方です。

私の古い友人は、二十代後半にラーメン店で大当たりし、年間のお小遣いが一億円!ありました。
その後百店舗の上場会社に育て上げましたが、もちろん一億円の給料は取っていません。

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