リーチ三暗刻、裏3。形でのリャンメン待ちリーチではなく、意思を持った手組みが見事に結果へと結びついた1局だった。
猿川は、南2局に一度は瀬戸熊の逆転を許すも、南3局は自力でアガって再逆転。オーラスをトップ目で迎えた。
新チームの初戦でトップ獲得となれば、チームの第一歩としてはベストと言っていい。
ただ、点差は700点。
テンパイノーテンはもちろん、親かぶりでも簡単に変わってしまう程度の差だ。それを考えれば、少なくとも一回はアガって瀬戸熊の追撃を逃れるところまで引き離したい。
猿川はこの局、ペンチーから動き、789三色のカン待ちテンパイを入れた。
ただ、仕掛けからテンパイまでの間に松本からリーチが入っている。安全牌もないし、ここは全ツッパ。
松本の手がツモって800-1600以上ならどうせトップ陥落、ならば自力決着を目指したほうがいい。
宣言牌またぎのも押した。
猿川は、瀬戸熊がノーテンなら自身もノーテン宣言をして勝つルートがある。
瀬戸熊はのトイツ落としでやや迂回気味に見えそう。
しかし、現状では完全安全牌がのみで中抜きすれば手が終わるし、そのあとで瀬戸熊に復活されたら最悪だ。
この押しこそ、もしかしたら猿川真寿の真骨頂なのかもしれない。
しかし、猿川の押しを松本が上回った。手の内は、恐ろしく高い。リーチツモタンヤオピンフドラ赤赤、
・・・裏1。
黄金の一撃、4000-8000の倍満ツモは、猿川はおろか瀬戸熊までかわし、王者・渋谷ABEMASに劇的な逆転トップをもたらした。
もちろん、猿川をはじめBEAST Japanextの面々は、Mリーグの試合を数多く見てきたはずだ。
赤があって打点を作れる要素が多いMリーグにおいて、これまでにもさまざまな大逆転劇が繰り広げられてきたことも、十分に知っているだろう。
そう、これがMリーグ。
猿川真寿と獣たちがついに足を踏み入れた、過酷で非情で、そして面白すぎるステージである。
最後に。
この日行われていたパブリックビューイング会場では、松本が裏ドラをめくった瞬間、歓喜と落胆、驚愕、さまざまな感情が爆発した。
それはまさしく「熱狂」であり、そこには「愛」があった。
6年目を迎えるMリーグ。年々成長を遂げているが、源にあるのは、ファンのみなさんがMリーグを愛し、楽しむ気持ちだと思う。
パブリックビューイングはある意味で、その愛情をみんなで確認する場なのではないだろうか。高揚する気持ちのどこかで、そんなことを思った。
Mリーグは間違いなく、ファンのみなさんのものでもある。
黄金の輝きと共に。
私たちのMリーグが、また始まった。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。