(亜樹はポン→打 チー→打)
鳴き読みには例外があるものだが、この仕掛けに関しては専門家が見れば一目瞭然でが濃厚となる場面だ。
以下にざっくりと解説をするが、読み飛ばしてもらって構わない。
・を先に切ってまで残したは関連牌。
・またこの先切りにより、暗刻のケースやからチーしての他の色()というような待ちも否定。
・やが先に切ってあることから対子のシャンポン待ちなどの愚形も考えづらい。
あらゆる例外が排除された、芸術的な捨て牌とも言えるのだ。
が切れない上に、待ちだったとしたらも使われていることになるのでカン待ちでリーチも打ちづらい。
寿人の打は苦渋の選択だったものと伺える。
蛇足ではあるが打はなかっただろうか。
こう構えておけば、イーペーコーは逃してしまう形になるが、亜樹の当たり牌濃厚であるをキャッチできるし、をツモったときにいい待ちで追っかけられるし、タンヤオになる可能性もある。
またまた蛇足になるが、亜樹の立場で待ちを読まれないためには
仕掛ける前のここらへんのタイミングでかを外しておく必要があった。
とはいえ先切りにはそれなりのロスを生む。
麻雀プロたちはなんであんなに先切りを多用するのだろうと疑問に思う人もいるかもしれないが、それは押し返すためであったり、今回のように鳴いた際に待ちを絞らせないためであり、常々受け入れのロスに見合うのかを考えながら選択していることを理解してもらえると幸いである。
相手の読みが正確であればあるほど、先切りは効果を増すし、これは永遠の課題と言っていいのかもしれない。
この局は寿人がを切らなかったことにより、茅森のピンフのみのアガリが生まれて亜樹の手牌は空を切った。
亜樹がを先に切っておけばは出たかもしれないので、考えさせられる一局となった。
南1局 鉄壁ガード
またしても寿人の手牌である。
寿人はここからを切った。↓
ホンイツがハッキリ見えるのにもったいない。
さらにを切り飛ばした後、ここから切り。↓
もう完全に手を崩してしまったのだ。
ポイントは下家・本田の仕掛けである。
本田はをリャンメンでチーし、明らかにピンズのホンイツに走っているように見える。
とはいえまだ字牌すら余っていないし、寿人の手牌だって1つ入れば勝負手になる。
さらにここで絞ると親の茅森と亜樹が有利になるという側面もある。
それをふまえた上で、寿人はピンズの絞り込みに徹した。
(俺の下家で簡単に鳴けると思うなよ)
自分も苦しいが、相手にも楽をさせないという意志の表れ。
そして、まだ勝負どころはここではないという嗅覚。
この局は寿人の絞り込みのかいがあって本田がノーテン。
茅森と亜樹がリーチでぶつかるも流局となった。
もし、寿人の手にポツンと浮いているやが鳴けたら
また違う展開になっていただろう。
南1局1本場 本田、一牌の後悔
本田が
「寿人さんの迫力に引いてしまった」
と唯一後悔する場面がこちらだ。
上家の寿人から3巡目リーチが入っている。
とはいえ自分の手牌もそこそこのイーシャンテン。
を切り飛ばし、ぶつけていく価値はある。
リャンメン()×三面張()なら勝算も十分に見込めるし、うまくいけば123の三色になるからだ。
寿人のリーチは愚形だってなんだってある。
そう、なんだってあるのだ。
これは、寿人と同卓したものしかわからない感覚なのかもしれない。
倍満確定だろうとなんだろうと、変わらぬ表情、変わらぬリズムで打ち、さも当たり前のようにアガリ倒してくる。
やられたときの印象だけが強烈に残ってしまう。
「かかってこいよオラ」
という表情の寿人に、迷う本田。