醍醐大が止めたる牌は 再起を誓う不死鳥の証【Mリーグ2023-24観戦記 10/26】担当記者 #後藤哲冶

これが、大介のチートイツに刺さる。リーチ、一発チートイツは6400の失点。
こんなの、【白】しか選べない。非情な運命が、醍醐に襲い掛かる。

醍醐の持ち点は0点を下回った。
ため息をつきたくなるような、そんな展開の中、迎えた親番。

大介から、リーチが入る。
醍醐はこの親番が落ちれば、着順アップはまず見込めない。
踏み込んでいくしか、ない。

最終盤に【7マン】をポンできてなんとかテンパイ連荘に成功。
どんなに厳しい展開だろうが、粘る。この最後の親番に、醍醐がしがみついている。

それでも、醍醐に試練はまだ続く。
9巡目に、トップ目を走る伊達からのリーチを受けてしまった。
【8ピン】を引いて、ここは現物の【4ピン】打ち。
【4ピン】【7ピン】と比較的安全な牌を切りながら、テンパイを目指す。

【5ソウ】を引いて、手牌が進んだ。
ただこの手牌だけを見るならば、切りたい牌は【6ソウ】一択だ。
【6ソウ】を切ればメンツ手もチートイツもイーシャンテンで、受け入れが最大。

伊達はリーチの1巡前に【7ソウ】を切っており、【6ソウ】【9ソウ】で当たるなら【7ソウ】【7ソウ】【8ソウ】から先にドラの【7ソウ】を切っていることになる。
それがあり得るかどうか。

十分にあり得る。それが醍醐の下した判断だった。
トップ目の伊達のリーチは役なしリャンメンであることが多い。役アリならば、向かってくるラス目の醍醐の親でリーチを打つのは考えにくいからだ。
その中で、醍醐が濃く当たり得ると思っていたのは、【3マン】【6マン】【5ピン】【8ピン】【6ソウ】【9ソウ】だったと言う。
チートイツのイーシャンテンは放棄してでも、ここは【3ソウ】を切ってのイーシャンテンに構えた。
絶体絶命の状況でも、自分にとっての最善手を捻りだす。

そんな醍醐が数巡後に、持ってきたのは――

【9ソウ】、だった。
自分の手牌には、全くいらない牌。
そしてこの【9ソウ】を使ってのテンパイは、残りツモ番が1回なことも考えると、厳しい。

醍醐が静かに、自分の手牌と河を眺めた。
この【9ソウ】を打たないということは、この親番を諦めるということと同義。
この親番を落としたら、着アップはかなり厳しくなる。

自身が欲しい【2マン】【5マン】【6ピン】【9ピン】は、まだ山に眠っていておかしくない。
テンパイを考えるなら、【9ソウ】は切る他ない牌。

醍醐は静かに……【3ソウ】を河に置いた。
ラス目で、最後の親番だからといって、醍醐が無暗に危険牌を切ることは無い。
たとえそれが、この半荘のトップをほぼ諦める行為だとしても。
最終的には、プラスに繋がると信じて。

開かれた伊達のテンパイ形は――

醍醐が2度に渡って止めた、【6ソウ】【9ソウ】待ちだった。

トップを獲得したのは、Mリーグ初となる開幕4連勝を飾った、伊達朱里紗

メリハリの効いた麻雀で、伊達は結果を残し続けている。
その表情には、自信すら浮かんでいるようにも見える。

対して、4着となってしまったのが醍醐。

しかし醍醐があの【6ソウ】【9ソウ】を打たなかったことで、打点が、2600だったか、はたまたそれ以上だったかはわからないが――
フェニックスはなんとか8位で踏ん張っている。

序盤の8位や9位、たかだか数ポイントなんて、関係ないと思われるかもしれない。
それでも、サポーターにとっては、苦しい中で醍醐が踏ん張ってくれた、その証でもあるのだ。

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