重なった!
誰よりもチートイツを嫌う打ち手が紡いだ、奇跡のテンパイ。
出アガリ6400では足りないので、リーチを打つ。
ライバルのリーチに対し、回っていた瑠美もテンパイ。
を切って、待ちだ!
待ちの種類は菅原より多いが、この時すでに山にはもも残っていなかった。
前局、痛恨の放銃をしてしまった瑠美は、絶対トップを奪われる訳にはいかない。
リーチの発声にその決意が窺える。
今シーズンすでに+173.4pt。いつの間にか、風林火山の頼れる存在になっていた。
運命の振り子はどちらに揺れるのか。
ふいに瑠美の切ったに本田の手が止まった。
チーできる!
と晒せば、が出ていき瑠美のアガリ。
と晒せば、が出ていき菅原の頭ハネ。
本田「菅原さんのリーチだけだったらを切るつもりでした」
が通っているため、カンよりもシャンポンやタンキで待たれやすいを警戒してのことだろう。
ただ、2軒リーチとなるとどうか。
本田が数秒間、迷う。
この動きでトップ者が決まる。
運命の瞬間を2人が、いや視聴者全員が待った。
麻雀って、なんでこんな漫画みたいなドラマが生まれるんだろう。
何年もやっているのに、なんでこんなにドキドキするのだろう。
そして本田はをつまんだ。
「ロン」
「ロン」
1つの牌に2つの声が重なる。
奇跡の頭ハネ。
まさに紙一重の激闘のフィナーレにふさわしい結末である。
奇跡のカケラは重なり、菅原は見事崖を乗り越え、着地した。
裏ドラをめくる手が震えている。
頬を叩いたあの時からこの瞬間まで、ずっと張り詰めていたものが一気に弾けたからだろう。
菅原千瑛、49500点のトップ。
もし、BEASTの逆襲があるとしたら、奇跡と言えるこの半荘がターニングポイントとだったと振り返るのかもしれない。
(こんな獣なら襲われたい)
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」