崖っぷちのBEAST 菅原千瑛が重ねた奇跡のカケラ【Mリーグ2023-24観戦記 11/28】担当記者 ZERO / 沖中祐也

重なった!
誰よりもチートイツを嫌う打ち手が紡いだ、奇跡のテンパイ。

出アガリ6400では足りないので、リーチを打つ。
ライバルのリーチに対し、回っていた瑠美もテンパイ。

【3ソウ】を切って、【6マン】【9マン】待ちだ!
待ちの種類は菅原より多いが、この時すでに山には【6マン】【9マン】も残っていなかった。

前局、痛恨の放銃をしてしまった瑠美は、絶対トップを奪われる訳にはいかない。
リーチの発声にその決意が窺える。
今シーズンすでに+173.4pt。いつの間にか、風林火山の頼れる存在になっていた。

運命の振り子はどちらに揺れるのか。
ふいに瑠美の切った【7マン】に本田の手が止まった。

チーできる!
【6マン】【8マン】と晒せば、【6マン】が出ていき瑠美のアガリ。
【8マン】【9マン】と晒せば、【9マン】が出ていき菅原の頭ハネ

本田「菅原さんのリーチだけだったら【6マン】を切るつもりでした」
【3マン】が通っているため、カン【6マン】よりもシャンポンやタンキで待たれやすい【9マン】を警戒してのことだろう。

ただ、2軒リーチとなるとどうか。
本田が数秒間、迷う。
この動きでトップ者が決まる。
運命の瞬間を2人が、いや視聴者全員が待った。

麻雀って、なんでこんな漫画みたいなドラマが生まれるんだろう。
何年もやっているのに、なんでこんなにドキドキするのだろう。

そして本田は【8マン】【9マン】をつまんだ。

「ロン」
「ロン」

1つの牌に2つの声が重なる。
奇跡の頭ハネ
まさに紙一重の激闘のフィナーレにふさわしい結末である。

奇跡のカケラは重なり、菅原は見事崖を乗り越え、着地した。
裏ドラをめくる手が震えている。
頬を叩いたあの時からこの瞬間まで、ずっと張り詰めていたものが一気に弾けたからだろう。

菅原千瑛、49500点のトップ。

もし、BEASTの逆襲があるとしたら、奇跡と言えるこの半荘がターニングポイントとだったと振り返るのかもしれない。

(こんな獣なら襲われたい)

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