また他には、スピードによる“緩急”も存在する。
例えば、
東1局1本場
を引くと、三色も視野に入れた切りを選択。
役牌トイツに赤牌という既にマンガンコースが見える中で、更に別のルートが加わった、育て甲斐のある材料。
巡目もまだまだ残っている。
ところが
5巡目に打ち出されたに未練なく反応して、ポンの一声を発すると
あっさり2,000点の出アガリにまとめた。
少し物足りないと感じる人もいるかもしれないが、実はこのアガリには大きな意味が隠れている。
それは、
ほぼ同時にテンパイを入れていた、たろうのメンホン成就阻止。
大切なのは相手との距離感。
一般的に序盤と呼ばれている1段目も、場合によっては終盤になる例がよく分かる一局であった。
こうした“緩急”も効果的に決まり、東場は多井ペースで進んでいく。
一方で、ここまで大人しい印象の選手が一人いた。
BEAST Japanext所属の猿川真寿である。
是が非でもトップが欲しいという訳ではないが、逆転でのセミファイナル進出に向けて、残り試合数も僅かながら気にせずにはいられない状況。
一試合一試合の親番も、浮上のキッカケの一つとも言える。
そんな中、
東2局16巡目
東家の猿川にチーテンの取れるが打たれたシーン。
だがしかし、チーして余るは危険牌で且つカンが入っているという補足を付け加えよう。
もしかしたら、マジョリティはスルーなのかもしれない。
ただし、コンセプトである
「獣のような攻撃的な麻雀」
をベースとして立ち上げられたチームなら鳴くのかも…。
そんな傍観者のような気持ちで観戦していたが、猿川は見送った。
要するに、この親番には固執しないという意思表示。
そして、その意図は南入してからハッキリと表れたのであった。
南1局
ラス目の南家で迎えたが、幸先良く主導権が握れるカンテンパイ。
チームとしても
ここは間違えられない所。
北家が早々に1枚を処理している点は気になるが、点棒状況的にトップ目の本田に制限を与えるリーチも効果的とも言えるが。
ましてや“ビースト”なら…。
しかし、
猿川の右手が掴み上げたのは
テンパイ取らずであった。
ここも前へ前へと押し出す気持ちを胸に秘め、自身の思い描く最終形へ。
そして
ツモにより先切りが活きるカン待ちでリーチへ。
相手にどう見られるかを意識した猿川らしい手筋は
ツモ
逆転トップへと繋がる道筋を立てた。
東場の親番での立ち回りから、キッカケとなるツモアガリ。
そして迎えた親番…。
解説の日吉さん的には
完全に“風が吹いている”と言うべきか。