背中で語ったキャプテンの覚悟。【Mリーグ2023-24観戦記 2/2 本田朋広 VS 猿川真寿 VS 鈴木たろう VS 多井隆晴】担当記者 小林正和

また他には、スピードによる“緩急”も存在する。

例えば、
東1局1本場

【4マン】を引くと、三色も視野に入れた【8ピン】切りを選択。

役牌トイツに赤牌という既にマンガンコースが見える中で、更に別のルートが加わった、育て甲斐のある材料。
巡目もまだまだ残っている。

ところが

5巡目に打ち出された【白】に未練なく反応して、ポンの一声を発すると

あっさり2,000点の出アガリにまとめた。

少し物足りないと感じる人もいるかもしれないが、実はこのアガリには大きな意味が隠れている。

それは、
ほぼ同時にテンパイを入れていた、たろうのメンホン成就阻止。

大切なのは相手との距離感。

一般的に序盤と呼ばれている1段目も、場合によっては終盤になる例がよく分かる一局であった。

こうした“緩急”も効果的に決まり、東場は多井ペースで進んでいく。

一方で、ここまで大人しい印象の選手が一人いた。

BEAST Japanext所属の猿川真寿である。

是が非でもトップが欲しいという訳ではないが、逆転でのセミファイナル進出に向けて、残り試合数も僅かながら気にせずにはいられない状況。
一試合一試合の親番も、浮上のキッカケの一つとも言える。

そんな中、
東2局16巡目

東家の猿川にチーテンの取れる【6ピン】が打たれたシーン。

だがしかし、チーして余る【4ピン】は危険牌で且つカンが入っているという補足を付け加えよう。

もしかしたら、マジョリティはスルーなのかもしれない。

ただし、コンセプトである

「獣のような攻撃的な麻雀」

をベースとして立ち上げられたチームなら鳴くのかも…。

そんな傍観者のような気持ちで観戦していたが、猿川は見送った。
要するに、この親番には固執しないという意思表示。

そして、その意図は南入してからハッキリと表れたのであった。

南1局

ラス目の南家で迎えたが、幸先良く主導権が握れるカン【6ピン】テンパイ。

チームとしても
ここは間違えられない所。

北家が早々に1枚【6ピン】を処理している点は気になるが、点棒状況的にトップ目の本田に制限を与えるリーチも効果的とも言えるが。

ましてや“ビースト”なら…。

しかし、
猿川の右手が掴み上げたのは

【5ピン】

テンパイ取らずであった。

ここも前へ前へと押し出す気持ちを胸に秘め、自身の思い描く最終形へ。

そして

ツモ【9ピン】により【5ピン】先切りが活きるカン【8ピン】待ちでリーチへ。

相手にどう見られるかを意識した猿川らしい手筋は

【8ピン】ツモ

逆転トップへと繋がる道筋を立てた。

東場の親番での立ち回りから、キッカケとなるツモアガリ。
そして迎えた親番…。

解説の日吉さん的には
完全に“風が吹いている”と言うべきか。

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