そうして持ってきたのは、タンヤオがつくテンパイである、嬉しい。
こうなってしまえば――
当然のリーチ。
ツモれば無条件でトップ、出アガリは、出たら裏1条件、なら裏2枚以上条件になる。
そこに、トップ目松ヶ瀬が追い付いた。
しかし待ちはドラ表示牌のペンと決して良くはない。
それでも、松ヶ瀬はここで覚悟を決めた。
太がトップにならないアガリをすることは考えにくい。
となれば期待するのはラス目の滝沢のアガリだが、滝沢は太のリーチの現物であるを対子落とししているのが見えている。
すぐにアガリになるケースは少なそうだ。
待っていてもトップが陥落してしまうのなら、ペンでも自分が勝負に出た方が良いと判断。
最後の大勝負、力の入るめくり合い。
結果は――
新緑の風が吹きぬけた。
太が、のツモアガリで決め切って。
セミファイナルチーム初トップを持ち帰ったのだった。
見事なトップを勝ち取った渡辺太。
オーラス、すぐに出る条件に達しない出アガリは見逃す予定だったと、インタビューで語ってくれた。
の待ちが悪くないことと、トップの価値が非常に大きいから故の選択。
大舞台であっても、冷静にこれらの判断を下せている太は、初年度とは思えないほどに落ち着いている。
それは、今まで積み重ねてきた自分の麻雀への信頼があるからだろう。
太の加入で、ドリブンズは大きく変化を見せているように思う。
チームメイトは楽屋配信や自身の検討配信で良く、「心の中の太に聞いてみた」のような発言をしている。
実際に、園田やたろうのような、初年度から戦っているメンバーが太に意見を聞いているシーンもよく映っていた。
太をリスペクトして、意見を取り入れる。太もまた、初年度から戦い、麻雀界で名を馳せてきた猛者から意見を受けて、更に成長する。
太がドリブンズに起こした風は、そうしてドリブンズに良い循環を生んでいるのだろう。
麻雀シンギュラリティの巻き起こす、新緑の風に乗って。
赤坂ドリブンズが5年振りのシャーレを目指す。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924