吹き抜けた新緑の風 5年ぶりのシャーレへ 渡辺太がドリブンズを変えていく【Mリーグ2023-24セミファイナル観戦記 4/11】担当記者 #後藤哲冶

太はこうした大局的視点にも優れている。
麻雀AIという単語が太のイメージに強く影響していることもあって、こうした大局的視点はなかなか話に上がりにくいが、こうした判断が下せるのも、太の麻雀の魅力だ。

結局、この局は堀がイーシャンテンから進まず、松ヶ瀬のピンフツモのアガリで決着。
松ヶ瀬としてはトップ目で親の堀が早そうだったことからダマテンを選択したのかもしれないが、トップ目とはいえまだ微差で、高目一気通貫のこのテンパイはそうそうオリることも無さそうと考えると、リーチの選択もあったか。

東4局

太はここから打【2マン】を選択。
タンヤオが色濃く見えるこの手牌、雀頭が現状無いことから、単独のタンヤオ牌の価値が高くなっている。
重ねた時にタンヤオの雀頭になるからだ。
それでも、太が【1ピン】を残したのにはわけがある。

全体にピンズが安く、特にピンズ下はまばらに切られており重なりが期待できる。
【1ピン】は攻守に優れた牌と判断したのだ。
更に、【2マン】の裏目は【3マン】引きもあるが、【3マン】引きは【5マン】でフォローできており、その時は345の三色まで見ることができる。

次巡には2枚切れで安全牌の【白】と交換する形で【1ピン】切りになるが、このたった1巡の後先だけでも、太がどれくらいの思考をしながら1つの打牌選択をしているかが分かっていただけると思う。

そのまま手が育ち、9巡目に先制テンパイ。
待ちはカン【6マン】と決して良くはないが、愚形2600テンパイは即リーチ。
ここはシステマチックに太がリーチ棒を場に置いた。

ここに滝沢が追いつく。
ドラの東を迷わず叩き切って、【5ピン】【8ピン】での追いかけリーチ。
このリーチ対決の行方は。

太が制した。
枚数では4枚対3枚と不利ではあったものの、3枚あれば十分に勝ち目があるのが麻雀。
5200の加点で、トップ目松ヶ瀬を猛追。

南1局
尚も、太は攻めの手を緩めない。

南場の親番を迎えた太。
しかし、トップ目松ヶ瀬から早いリーチを受けてしまう。
カン【3マン】を引き入れてテンパイだが、待ちはカン【5ソウ】と悪い。打点も、リーチドラ1とそこまで高いわけでもない。

それでも、太は全く臆することはなかった。
むしろこれは、トップ目から直撃をとるチャンス。
自身が親番ともなれば、ドラが1枚あれば打点はそれで十分。
迷いなくリーチ宣言。

今度は流石に残り枚数も5対1と分が悪く、松ヶ瀬の当たり牌【2マン】を掴む。
2600の放銃。

それでも、太の表情になんら変化はない。
自分はいつも通り、やるべき事をやっているだけ。今まで重ねてきた数万という対局と同じように。
そう言わんばかりだ。

南4局

南2局で700、1300の加点をした太は、トップが十分狙える位置でオーラスを迎えていた。
松ヶ瀬とは5900点差。1000、2000のツモか、6400以上の出アガリ。直撃なら3900で足りる。

【2ソウ】を暗刻にしてイーシャンテン。
ここで選択を迫られる。打牌候補は、【1マン】【6ピン】【4ソウ】といったところか。

太が選んだのは、【1マン】だった。
これは瞬間のテンパイのしやすさやアガリやすさというよりも、変化も見た一打。
1000、2000以上の打点が必要な状況だからこそ、タンヤオの1翻は重い。
こうしておくことで、マンズ・ピンズ・ソーズすべての色で二次変化を望むことができる。

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