王者の窮地　救えるか松本吉弘　再びあの地へ、望みを繋げ【Mリーグ2023-24セミファイナル観戦記 4/25】担当記者 #後藤哲冶

７枚残っていたを、一発でツモってみせた伊達。裏もきっちり乗せて、僥倖の3000、6000。
レギュラーシーズンから獅子奮迅の活躍を魅せる伊達にとっては、これくらいは当然と思わせてくれるが。

無論、当然などではない。
伊達のいるKONAMI麻雀格闘倶楽部もまた、窮地に立たされているチームのひとつ。
第１試合は高宮が４着に沈み、まさに背水の陣となっていた。
伊達も必死に、懸命に打っている。このセミファイナルを、生き残るために。

東２局１本場

跳満の親被りもあって、３着になっていた松本が、を引いてきて少考。
ストレートな打牌はだが、ピンズのくっつきを全て放棄する上、うっすらと見えている５６７や４５６の三色を消すことになる。

それでも、松本はを選んだ。
もちろんこう組んだのには理由がある。それは、マンズの下も、ソーズの下も場況が悪くない事。
この形で固定しても、十分にアガリがあると見込んだからだ。

その狙いに呼応するかのように、松本の元に牌が来る。
を引き入れてカンリーチを敢行。そして見事にこれをツモ。嬉しい裏ドラ１枚も乗って、2000、4000の加点に成功だ。

２度の流局を挟み、そこまで大きく点差が動かないまま、第２試合は南場へと移行する。

南１局２本場
松本にハッキリと勝負手が入った。
４巡目にして、役満四暗刻のイーシャンテン。
松本の模打が、僅かに早くなる。表情は変わらずとも、胸の内の高揚を表すかのように。

そんな中、赤を１枚使ってのイーシャンテンに辿り着いていた伊達の、手が止まる。
愚形ターツの選択。カンか、カンか。
が１枚切れているので、カンの方が１枚、目に見える枚数は多い。

それでも伊達は、カンの方を外す選択をした。
正直、この選択は意外だった。渋川が第１打にを切っており、を持っている可能性が下がっている。
他にピンズ上とソーズ下に関連する情報は少なく、松本が直前にを手出しした程度だ。
を残して置くと３４５三色変化も残るため、ここは切りが優位に見える。
二次有効牌であるを引いた時のを重く見たか、それよりも何か別の理由があったかはわからない。

だが、実際には残り１枚で、は３枚残っていた。伊達の慧眼と言えるだろう。
を引き入れてのカンリーチは、山に３枚。

伊達のリーチの直後、松本が大きく一度、首を回した。
自身は役満のイーシャンテン。「行くしかない」そう覚悟を決めた瞬間だったのかもしれない。

しかし無情にも、伊達の当たり牌が、松本のところへ。

「ロン」
そう言われた瞬間、松本の表情が苦悶に歪んだ。
……このチャンスだけは、逃したくなかった。

2600と打点が高くなかったことが幸いか。
まだ、トップを狙える位置に留まることができる。
逆に、伊達としては、トップ確定のアガリとまではいかないものの、松本の親番を落とせたのは大きい。

南２局
この局は、伊達が驚異の守備力を魅せる。

伊達にテンパイが入った。
しかし親の渋川がトイトイらしき捨て牌で３副露、そしてラス目の小林からリーチ。
場は既に煮詰まっている。

を切ればテンパイだが、ドラ跨ぎの牌で、当たった時に高いケースが多い。
とはいえ親の渋川には少し通りそうな上、自身はドラドラのテンパイだ。
１枚勝負する、十分にある選択だろう。
河全体を深くまで観察し、２度３度小さく頷いた後に、伊達は