流した涙はABEMASへの想い 日向藍子が挑んだ初の最終日【Mリーグ2023-24セミファイナル観戦記 4/30】担当記者 ZERO / 沖中祐也

そういや他のチームと違い、ABEMASは立って観戦していることが多い気がする。

藍子、お前は一人じゃない。俺達も一緒に戦っているぞ。

手を伸ばした先には

【白】がいた。
「3000/6000は3100/6100」

申告する日向の声が上ずる。
ABEMASを終わらせない。

昨夜、登板が決まった時、嬉しかった。
ずっとたかちゃんが戦ってきた最終日を、翔ちゃんとともに任されたことが、多井のワンマンチームではなく、4人で戦っている感じがして、本当に嬉しかった。

だからこそ、ここで終わらせるわけにはいかない。

南3局、松ヶ瀬の親リーチを受けるも

四暗刻イーシャンテンまで手が伸びる。
ただし浮いている【發】【中】生牌

意を決した日向は【發】を切って勝負に出る。
もしもここで四暗刻をアガるようなら…

漫画のような逆転条件には、漫画のようなアガリが必要だ。

ABEMASに残された時間は限られている。

日向の祈りは…

届かず、流局に終わった。
オーラスの親も太の早いアガリで決着。

トップこそ確保できたが、大きなトップを取るには至らなかったのだ。

インタビューを受けている際、ふいに

涙が溢れ出してくる。

「悲しいわけじゃなくて…」
と声を絞り出す日向。

まだ最後の試合を残している段階である。
本来はまだ涙を見せるべきではない。

でも、きっと、いろいろな感情が交錯しているのだろう。
自然と溢れてきてしまったのだろう。

全てを分かち合った仲間。
応援し続けてくれるファンの声。
出番を与えてくれたことへの感謝。

これまでの良かったこと、悪かったこと。
近づいてくる、終焉。

張り詰めた対局を終えた後、一気にそれらの感情が押し寄せ、それが涙となって溢れ出てきてしまったのだ。
笑顔を作ることが得意の日向にも、その感情の流出はどうにも止められない。

──最終戦の白鳥が4着に敗れ、ABEMASは事実上敗戦となった。

だが、良いことも悪いことも全て糧としてきたABEMASは、この悔しい負けも財産として吸収し、また一段と強くなって来シーズン戻ってくるに違いない。

さて、こういった敗者の上にファイナルがある。

どのチームが優勝しても2回目の優勝となる4チームが覇権を争う。

現状はセミファイナルで駆け上がってきた風林火山と、レギュラーシーズン圧倒的な勝ち方をしたPiratesの一騎打ちの様相を呈している。

風林火山かPiratesか、それとも…。

いずれにせよ、もう2週間と少しで今シーズンの覇者が決定する。

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