そういや他のチームと違い、ABEMASは立って観戦していることが多い気がする。
藍子、お前は一人じゃない。俺達も一緒に戦っているぞ。
手を伸ばした先には
がいた。
「3000/6000は3100/6100」
申告する日向の声が上ずる。
ABEMASを終わらせない。
昨夜、登板が決まった時、嬉しかった。
ずっとたかちゃんが戦ってきた最終日を、翔ちゃんとともに任されたことが、多井のワンマンチームではなく、4人で戦っている感じがして、本当に嬉しかった。
だからこそ、ここで終わらせるわけにはいかない。
南3局、松ヶ瀬の親リーチを受けるも
四暗刻イーシャンテンまで手が伸びる。
ただし浮いているとが生牌。
意を決した日向はを切って勝負に出る。
もしもここで四暗刻をアガるようなら…
漫画のような逆転条件には、漫画のようなアガリが必要だ。
ABEMASに残された時間は限られている。
日向の祈りは…
届かず、流局に終わった。
オーラスの親も太の早いアガリで決着。
トップこそ確保できたが、大きなトップを取るには至らなかったのだ。
インタビューを受けている際、ふいに
涙が溢れ出してくる。
「悲しいわけじゃなくて…」
と声を絞り出す日向。
まだ最後の試合を残している段階である。
本来はまだ涙を見せるべきではない。
でも、きっと、いろいろな感情が交錯しているのだろう。
自然と溢れてきてしまったのだろう。
全てを分かち合った仲間。
応援し続けてくれるファンの声。
出番を与えてくれたことへの感謝。
これまでの良かったこと、悪かったこと。
近づいてくる、終焉。
張り詰めた対局を終えた後、一気にそれらの感情が押し寄せ、それが涙となって溢れ出てきてしまったのだ。
笑顔を作ることが得意の日向にも、その感情の流出はどうにも止められない。
──最終戦の白鳥が4着に敗れ、ABEMASは事実上敗戦となった。
だが、良いことも悪いことも全て糧としてきたABEMASは、この悔しい負けも財産として吸収し、また一段と強くなって来シーズン戻ってくるに違いない。
さて、こういった敗者の上にファイナルがある。
どのチームが優勝しても2回目の優勝となる4チームが覇権を争う。
現状はセミファイナルで駆け上がってきた風林火山と、レギュラーシーズン圧倒的な勝ち方をしたPiratesの一騎打ちの様相を呈している。
風林火山かPiratesか、それとも…。
いずれにせよ、もう2週間と少しで今シーズンの覇者が決定する。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」