流した涙はABEMASへの想い 日向藍子が挑んだ初の最終日【Mリーグ2023-24セミファイナル観戦記 4/30】担当記者 ZERO / 沖中祐也

日向の表情に迷いは見られない。
最終日に登板することで、あの日の多井の気持ちを想像する。

「たかちゃんもこういう気持ちだったのかな」
と。

決意のマンズ寄せが実り、

2000/4000のツモアガリでトップ目に立つ。
ただ、並のトップではまだまだ足りない。迎える親番でどれだけ連チャンできるか…

東4局、その親番で日向の手が止まる。

日向はなんとここから【赤5ソウ】を切った。
チャンタ系の手牌に狙いを絞ったのである。

10巡目に

【3ピン】をツモってイーシャンテンに。
だが、ここから待てども暮らせどもテンパイしない。
欲しい【2マン】【7マン】や打たれる一方で、鳴くことすらできない。

麻雀のどうしようもない苦しみ。
試合数だけがジリジリと減っていくABEMASの現状とシンクロする。

結局最後までテンパイを果たすことはできず、日向は静かに手牌を伏せた。

ABEMASヒストリー②

多井の涙を目撃した後、思っていることを何でも言い合おう、と白鳥が提案。
そこからチームが1つになるのは早かった。

二度とタカハルにあんな思いはさせない。
ABEMAS優勝という共通の目標を持ち、相手の意見を尊重した上で、自分の意見も言った。
相手を気遣い、信頼し、意見をぶつける。これが本当の仲間と言えるのかもしれない。

日向もMリーガー兼ママという二足のわらじに慣れてきたこともあり、メンタルも強くなっていた。

4年連続3位という結果にこそなってしまったものの、この3位はこれまでの3位と全然違うよね、と言い合えるくらいにはABEMASは結束し、自信を持っていたのだ。

ウチらは強い。
いずれ必ず優勝できる──と。

その自信はすぐに現実のものとなる。

翌年、他チームを圧倒する成績で優勝したのである。

ABEMASは2年目に日向が加入しただけで、一切メンバーが変わっていない。
そして5年連続でファイナルに進出している。
つまり、どのチームよりもMリーグを経験しているのだ。

4人が、口を揃えて言う。
良い時期も悪い時期もたくさん経験してきたけど、全ての経験は今のABEMASにとって必要なことだった、と。

衝突したり、涙をのんだりの日々があったからこそ、4人は強い絆で結ばれているのだ。
この4人で本当に良かった。
この4人でずっと勝ち続けたい。

南2局1本場、またしても日向の手が止まる。

日向は【2ピン】を切った。
3対子あるものの、安易に字牌を切らず、この手の本線はホンイツだと狙いを定める。

そして残した字牌が…

重なる。
【2ピン】【3ピン】はドラ受けターツだが、ここ払っていきまたしても一気のホンイツ寄せだ。

【7ソウ】をポンし…

順調に手が進んでいく。
さらに【西】をポン、【7ソウ】を加カンすると…

新ドラの【5ピン】が親の太にもろのり!
日向はリンシャンからツモってきた【3ソウ】を残し、【4ソウ】を切ってトイトイに受ける。

太もカン【7マン】待ちのテンパイで、お互いに譲れないめくり合いとなる。
太か、日向か…

アガれなければ、髪の毛一本の希望も絶たれてしまう。
ABEMASの命運を、メンバー揃って見届ける。

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \ほぼ毎日4コマ最新⑤巻 好評発売中/