【 #神域リーグ2024 第13試合観戦記】グラディウスを襲う不運の波 それでも。 #因幡はねるが静かに、待ち続けた好機【文 #後藤哲冶 】

終盤の13巡目。赤【赤5ピン】を引き入れてテンパイ……!

「頼む!」

この時、待ちは【9ソウ】1枚しか残っていなかった。
けれど、あれだけ厳しい展開に見舞われた後なのだ。少しくらい幸運なことがあったって良いじゃないか。
ままならない配牌からゆっくりと育てた、因幡の復活の一手は。

3000、6000という大輪の花となって返ってきてくれた……!
地上復帰。まだ戦える。
これで、親番で加点すれば――

「嘘でしょ? やりすぎだってマジ……」

そんな因幡の、グラディウスの希望を打ち砕くような、2件リーチ。
先に解説しておくが。対2件リーチというのは、ほとんどの場合、オリが麻雀のセオリーだ。
それは、そもそも2人がリーチ状態から、自分が追い付いてアガリ、という可能性が低い事。
リーチ者2人ということは、横移動の確率が上がっており、自分が失点せずに局を終えられる可能性がある事。
以上の2点から、基本的にはオリが正解。そんなこと、因幡だって分かっている。

それでも、因幡は歯を食いしばってギリギリまで踏み込む。
失点が無いかもしれないというメリットは、今の因幡にとって意味をなさない。
どのみち、この親で点棒を増やせなければ、着順アップは厳しい。
このままの4着を許せるグラディウスの状況ではないのだ。

静かに因幡が押し続ける。好機を、ひたすらに待っている。
聞こえてくるのは、打牌の音と……因幡の微かな呼吸だけ。

テンパイが入った……!
【1マン】単騎か、【3マン】単騎。

因幡は、【1マン】単騎に構えてのダマを選んだ。まだだ。本当の好機は、まだ。
今出る【1マン】にロンと言えないのは苦しいが、この待ちに全てをかけるのは心もとない。
2件リーチという極限状態の中でも、因幡が模索する。アガれる道を。

絶好の赤【赤5ピン】引き。
が、【2ピン】【5ピン】は目に見えて残り2枚。

それでも、因幡はここでリーチを選んだ。
【3ピン】が3枚見えていて【2ピン】が使いにくいこと。
もう巡目も深くなっていて変化が望めないこと。

耐えて耐えて手に入れた好機。
結果は――

「よっしゃ……! きた!」

息も絶え絶えに、因幡から歓喜の声が漏れる。
トップ目長尾からの一発討ち取りは、12000の大きなアガリ!
これで2着争いに割って入り、更にはトップまで見えてきた!

南2局1本場

因幡の猛追により一時的に4着になってしまった朝陽に、良い手が入っていた。
【5マン】はツモ切り。マンズの上は【8マン】【9マン】を既に切っており、フリテンになってしまう可能性を含んでいる。
であれば、【3ソウ】【7ピン】という優秀なくっつきで勝負。
特に【7ピン】は、【6ピン】【8ピン】を引ければ高目三色のテンパイだ。

そうして引いてきたのは……【9ピン】
タンヤオも消えて、待ちも悪くなる、くっつきとして嬉しいとはとても言えない牌だ。

【8ピン】は悪くない。リーチドラ1曲げましょう! 」

基本に忠実。
数々の教えを受け、そして成長してきた朝陽は、このカン【8ピン】が悪くないこと。
そしてリーチドラ1は愚形でも基本的にリーチが有利な事を知っていた。
実際、この【8ピン】は全て山に残っていた。

多井からの追っかけリーチも入り、因幡が朝陽の当たり牌、【8ピン】を掴んで撤退。
先ほどとは状況が変わっている。
ここでオリても、まだ着順アップは狙えるのだ。冷静な判断。

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