熱論!Mリーグ【Thu】
“ずるごー”は健在だった
小林剛率いる
海賊たちの点棒略奪劇!
文・真中彰司【遊軍ライター】2018年10月25日
華々しく開幕したMリーグももう第15節。全対局中の4分の1を消化しようとしている。
今日の対戦カードは現在(10/24終了時点)の上位4チーム。まさに序盤の天王山ともいえる対局である。
首位を走るABEMASに他3チームがどこまで追いつけるか、はたまたABEMASが更にポイントを伸ばして独走するのか、目が離せない。
この日の先発は以下の4選手。
ここ最近2連続ラスと波に乗り切れない鈴木たろう・白鳥翔の両名に、安定感はあるが未だにトップが無い小林剛、そして役満級の手を作って視聴者を沸かせ続けている滝沢和典という組み合わせ。
その中でも選出が面白かったのは渋谷ABEMAS。
監督の藤田社長、なんとTwitterのアンケートで先発を決めるという作戦に出た。
プロ野球やJリーグでは考えられない、斬新な試みである。
その結果として白鳥が先発に選ばれた。
上位対決はいきなり東1局から火花飛び散る熱い展開に。
小林がこのテンパイで待ちの先制リーチをかければ…
をポンしていた白鳥もカン待ちで追いつく。
このままめくり合いになるかと思われたが、そこに割って入ったのが親のたろう。
カンと待ちは悪いが、親ということもあり果敢に追っかけリーチ。
しかし追っかけも虚しく数巡後にたろうがを掴み、小林の頭ハネで3900。リーチ棒2本を掻っ攫おうとした白鳥からアガリを掠め取る。
どうやら小林は対局前に鳩サブレを食べていたらしいが、その効果なのだろうか…
場面が大きく動いたのは東3局。そしてこの半荘の主役はこの男だった。
パイレーツの船長こと、キャプテン小林剛である。
小林と言えばとにかく鳴きが多い印象だが、何でもかんでも鳴いているわけではない。
よくリーチをかけ、よく鳴き、よく降りる。要は局への参加率が非常に高いということである。
局に参加する手段としてリーチと鳴きを巧みに使い分け、その中でも鳴きの比率が他のプレイヤーよりもやや多い、そんな打ち手といったところだろう。
これまでの対局でもトップは取り切れないものの、その参加率で何度も着順上昇のアガリを決めて、ラス無しという安定感をキープしてきた。
そんな東3局、小林の配牌がこちら。
ドラのが対子で打点は見込めるが、どうにもスピード感に欠ける手牌である。
淡々と手を進め、4巡目で七対子のイーシャンテンに。
これで手牌に5トイツあるため、七対子のイーシャンテンであると同時に、トイトイへ向かうための材料も足りている。ドラのが出た時にどのように対応するか、注目が集まったが…
たろうから打たれたをポンせずに見送った。
ドラポンは魅力的だが、仮にポンしてもトイトイしか役が無く、残ったはポンしにくい、と考えての選択であろう。それならば七対子でリーチを目指した方が得だというわけだ。
すると、この選択が見事に的中。
あっさりとを重ね、単騎でリーチをかけた。
そこに滝沢がタンヤオの仕掛けで躱しに向かうも、脇の2人が完全にオリていてアガれない。
そんな中で小林は平然とラス牌をツモり、裏ドラも乗せてしまった。
リーチ・ツモ・七対子・ドラ4の8000オール。
これには視聴者も「ずるごー!」と叫んだことだろう。
この「ずるごー」という言葉、天鳳名人戦から生まれた言葉で、好配牌が来た時や裏ドラが乗った時など、小林にとって良い展開になった時に使われる言葉なのだが、ここでは単に「ズルい」という意味ではないことをご理解いただきたい。
「ズルい」というより、アガリに向かって最善の選択を取り続けた結果、それ相応の報酬をもらっている、とも考えられるのではないだろうか?筆者はそこに称賛の意を込めて「ずるごー」と叫んでいる。
すると東4局、滝沢の満貫ツモで親被りした直後には
この3トイツの難しい配牌を…
またも七対子の単騎に仕上げ、なんとをツモって3000-6000。
実況も思わず笑ってしまうほどの「ずるごー」っぷり。
鳴いても強いが、鳴かなくても強い。隙あらば海賊のように点棒を奪いにやって来る。それが小林剛という雀士なのである。