「勝負勝負! 」
空星のリーチを受けて、龍惺がツモ切り追っかけリーチを選択!
ヘラクレスはほぼほぼ敗退が無い位置でのセミファイナルとはいえ、3連続ラスは引きたくない。
第10節悪夢の3連続ラスを経験しているヘラクレスとしては、二の轍は踏めない。
オリているだけでもラスを引くことがあるのが麻雀。
龍惺はこの手で勝負に出た。
この勝負を制したのは、残り1枚しかアガリ牌が残っていなかった龍惺の方だった。
ここはしっかりと勝負に出た龍惺がお見事。
逆に空星は、今シーズンの不調を象徴するように、不運なスタートとなってしまった。
しかしそれでも、空星は冷静だった。
続く東3局、この形にを引いてきて打。ピンズの形は複雑だが、基本に忠実にタンヤオを狙った選択。
龍惺のリーチ宣言牌のが上家の風見から合わせる形で切られる。
これをチーすれば、タンヤオ赤1のテンパイに取れるが。
空星はスルーしてを引き入れ、追いかけリーチ敢行。
チーしてのタンヤオ赤1は形打点ともに不十分。そんな形で押すよりは、納得のいく形で追い付きたいと選択したのが功を奏した。
そして更に同巡、風見が追い付いてしまう。
3人目のリーチ宣言牌として、押し出される形になったのは、空星の当たり牌、……!
空星が点棒を回復することに成功。
空星が所属するゼウスも、第10節に大きくスコアを伸ばしたとはいえ、グラディウスから狙われる立場。
この加点が持つ意味は大きい。
流局を挟んで、東4局2本場。
勝が3巡でイーシャンテンに辿り着く。風見から出たは鳴けばテンパイの牌だが。
「鳴かん」
勝は迷う事すらなく、スルーを選択。
今欲しいのはポンしての2000点ではなく、少しでも高打点を目指せるリーチだ。
「お願いします! 」
狙い通り、待ちのリーチに辿り着いた……!
これでまずは、トップを狙える位置に行きたい。
しかしそれを、龍惺が簡単には許してくれない。
ドラのを引いてのリーチは、とのシャンポン待ち。
打点は安目のでも9600と強烈。
控室で見守っている渋川も頭を抱える。
途中まで有利だった枚数すら、互角になってしまった。
もし東で放銃して、裏ドラでも乗ってしまったら、本当にそこでグラディウスの希望が絶たれてしまってもおかしくない。
危険牌を持ってくる度に、息遣いが乱れる。
勝が感じている緊張がそのまま、伝わってくる。
「ここで勝たなかったらいつ勝つ……! 」
勝負の行方は――
勝が競り勝った……!
2600のアガリ+供託で、少なくない収入。
そして、迎えるは南場の親番――
「やっ……ば、なに、これ」
明確に勝が、息を呑んだ。
望外のドラの発暗刻。
これはただのドラ暗刻と違い、役牌であることの意味合いがとても大きい。
ようは、とにかく鳴いて手が進む牌は鳴いてアガリに行っても、最低で12000が保証されている、ということなのだ。