【 #神域リーグ2024 セミファイナル第1試合観戦記】#鈴木勝 が、心から勝利を願い叫んだ。　繋げるか、“奇跡のバトン”　苦難と執念のセミファイナル【文 #後藤哲冶 】

「やばいやばいやばい、落ち着いて……！　」

更に今一番欲しい牌と言っても過言ではない牌、を引き入れて、勝の動かしているカーソルが乱れる。
絶対にオリられない南場の親番で、最高の手牌が入った。
高まる心拍数をなんとか落ち着けて、勝が目の前の牌と必死に向き合う。

しかしまさにその瞬間、風見に早いテンパイが入った。
を引き入れてのテンパイは、待ちの変則３面張。
端がかった良い待ちなこともあって、これは当然のリーチ。

「こんなんオリてちゃ麻雀にならんので……！」

静かに勝が決意を固めた。
この局に、オリはない、と。

押し続ける。
絶対にこの手をアガるんだと、強い決意で前に進んでいた、そんな、勝に。

冷たい現実が襲い掛かる。
空星の手からが放たれ、風見からロンの声。
この瞬間、勝の18000クラスの手牌がアガれる可能性は０となり……。
また同時に、最後の親番すらも、勝の手から零れ落ちた。

「親流れちゃったけど、点数的にはまだあるし……！　」

それでも決して、諦めることは無い。
もう一度気を取り直して、トップを取ることに集中。
幸い南２局の手牌も、かなり良い。

だというのに、またしても龍惺から先制リーチを受けてしまう。
そして、一発目に持ってきた、手牌に不要なは。

なんと、龍惺のアガリ牌を一発で引かされてしまっていた。
あまりにも残酷な牌の後先に、監督の渋川が項垂れる。

それでも、勝は限界ギリギリまでを打たなかった。
ギリギリまで重ねてのテンパイを見たのは、勝の意地。
しかしそれでも、最後テンパイが入った時には、押し出されてしまう。

5200のアガリ。
龍惺はこれで後続との点差を離すと。

南４局
自身の親番で値千金の4000オール。
これでトップを大きく近付けるアガリ。ほぼ、ヘラクレスの敗退は無くなったと言って良い。

逆に、苦しい立場に立たされたのは、勝だ。
トップ目龍惺との点差は、２万点を超えてしまった。

「ろたんに追い付くのは厳しいかもしれないから……２着死守」

勝は、渋川監督に言われたことを忘れてなどいない。
トップが欲しくて、ダメなら、２着は最低条件。
幸い、トップに立っているのはグラディウスのターゲットではない、ヘラクレスの龍惺だ。
であれば、このままの着順でさえ終わることができれば、グラディウスのバトンは繋がる。

勝にテンパイが入った。
現状はのみ。勝がリーチのボタンに手をかけて――

やめた。
勝が選んだのは、ダマテンだった。

「リーチ打つと、きらめ的にまずいのか」

そう、なんと３着目きらめとの点差は、僅か６００点。
リーチ棒を出してしまうと、その瞬間、勝は３着に落ちてしまう。