そして仮に、4着目風見がリーチをしてきて、ツモった場合。
なんと勝は……4着にまで落ちてしまい、それはイコール、チームの敗退を意味する。
それだけは、できない。
しかし次巡、を持ってきて事情が変わった。
をカンして、打点が上がり。更に、裏ドラまで1枚増えた。
「アガればええんや……! ろたんから! 」
勝は、リーチを選んだ。
今年何度も何度も、めくり合いに負けてきたリーチ。
怖くないと言えば、きっと嘘になるだろう。それでも、勝は挑んだのだ。
第8節に、チームメイトのルイスが見せた、奇跡の跳満直撃逆転の例もある。
麻雀は、何が起こるか分からないから。
少しでもあるトップの可能性に、勝は懸命に手を伸ばしたのだ。
その結果は、望んだ最良のものではなかったとしても。
勝の決死の努力によって――グラディウスの奇跡のバトンは、確かに繋がったのだった。
勝が、渋川の待つグラディウスの楽屋に帰って来た。
「よくやった! ナイス! 繋いだ繋いだ! 」
「ありがとうございます……! 」
あたたかく迎え入れられて、勝が安堵の息を吐いた。
思い返してみても、勝にとって今年の神域リーグは、「楽しい」よりも「苦しい」が長かったかもしれない。
『いままでとった2着の中で、いっちばん嬉しい2着かもしれない』
……それでも。
今年得た経験も、努力も、そして後悔も。絶対に無駄になんてならないから。
最後まで、麻雀を「楽しい」と言ってくれた勝君に、心からの敬意と、感謝を。
また、楽しそうに麻雀を打っている鈴木勝の姿が見られる事を――心から願っている。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924