「部屋とMリーグとゼウスと僕」〜鈴木たろうの純恋歌〜【熱論!Mリーグ】担当記者:ゆうせー

熱論!Mリーグ【Thu】

「部屋とMリーグと

ゼウスと僕」

〜鈴木たろうの純恋歌〜

文・ゆうせー【木曜担当ライター】2018年11月15日

 

「もう知らないっっ!!!」

 

そう言って彼女は部屋を出て行った。バタン、という無機質な音が一人きりの部屋に響く。

友人と麻雀をしていたせいで彼女の部屋へ来るのに遅刻してしまった僕を待っていたのは、ふくれっ面の彼女と、

 

「私と麻雀、どっちが大事なの?」

 

という質問。僕の答えが、どうやら彼女を怒らせてしまったようだ。おかしいな…こういうときは『そんなの言わなくても分かるだろ…』とだけ答えればいいよ、っていきつけの雀荘オーナーに習ったのに。

 

部屋の鍵を持っていないので、追いかけるわけにもいかない。彼女のいない彼女の部屋で、僕は帰りを待つことになった。いつもより広く感じる部屋に、パソコンからのBGMが響く。僕を待っている間に何か聴いていたのだろう。

 

—あなたの両腕を切り落として 私の腰に巻き付ければ あなたはもう二度と 他の女を抱けないわー

 

…おいおい。大丈夫かよ、この歌。唖然としているうちにサビになった。

 

ー死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。私を好きじゃないのならばー

 

…すごい愛され方だな…消そう。iTunesの停止ボタンを押すときにパソコンの画面が目に入ってきた。

 

『あいみょん 貴方解剖純愛歌~死ね~』

 

あいみょんって、今年紅白出るんじゃなかったっけ?ずいぶんとおぞましい歌を歌ってるけれど大丈夫なのか??

 

BGMを止めてふと時計を見ると、19時だった。Mリーグが始まる時間だ。ミーハーな彼女はナルシストっぽい白鳥翔のファン。麻雀マニアの僕はゼウス、鈴木たろうのファン。雀風が好きなのもあるけれど、顔がすごく似ているのだ。僕の雀荘でのあだ名はもちろんたろうだ。

 

今日は一緒にMリーグを見ようって約束してたのにな…。どうせ部屋から出られないし…自分に言い訳をしながら、僕はMリーグを見て彼女の帰りを待つことにした。

 

【東1局1本場】

 

たろうは目下絶不調。今日までに積み重なったマイナスは▲215.5。悲惨な放銃が多くて、ファンの僕じゃなくても目を覆いたくなる場面が多かったと思う。今日はどうだろうか。

 

12巡目、たろうに先制リーチが入る。今日こそは…

 

と、思っていたら、

満貫をダマにしていた白鳥から追っかけリーチが…マズイ、つかむなよ、たろう…

 

あぁ…

 

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

 

白鳥にメンタンピン一発イーペーコー赤表、12000の放銃。

 

たろうが放銃すると、まるで自分が放銃したような気持ちになる僕。今日もダメなのか…

 

しかし、たろうは親番で、

 

メンピンツモイーペーコードラ裏の6000オールをツモってすぐに盛り返す。今日はいけるぞ。頼む…

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