嬉しい赤引き……!
これでドラを全て使い切れば8000点。内川が、を仕掛けて前に出る。
を345の形で鳴くことに成功し、更にを引き入れてイーシャンテン。
あとはにくっつけてのテンパイを――
「ポン」
内川から迷いのない発声が響いた。
このルートがあった。
を引いた直後、寿人の手番で放たれたこのを即座に鳴けたのは、ポンを決めていた何よりの証拠。
待ちテンパイ。たどり着いた。
直撃かツモれば、逆転。この悪夢のような半荘を、3着で終えることができる。
萩原からが放たれるも、もちろんスルー。
大介もその同巡に処理。この辺りは抜け目ない。
同巡内フリテンで、内川はこのにロン発声ができない。
それでも静かに、内川が牌山に手を伸ばす。
悟られるわけにはいかない。は止まるかもしれないが、最後のくらいは、大介がテンパイ打牌等で切ってくれるかもしれない。
その可能性を、自ら潰すわけにはいかないから。
大介が、オリた。
もう、次の局は無い。
内川の、最後のツモ番。
ゆっくりと、手を伸ばした先。
持ってきた牌を慈しむように。
泥まみれになった桜の騎士が、そのを静かに撫でた。
トップには、佐々木寿人。
勝負手でしっかりと押し切る流石の麻雀で、トップを獲得。
今年も格闘俱楽部は強い。そう思わせてくれる内容だった。
見事3着を掴み取った、内川。
そんな内川が、昨年のシーズン終了後に行った取り組みを、ご存知の方はいるだろうか。
チームメイトの堀慎吾と共に、自身のMリーグでの打牌を振り返る検討配信をしていたのだ。
この配信では、堀が内川の打牌に対して踏み込んだ意見を放ち、それを受け止め、自身の中へ落とし込んでいる内川の姿が。
この配信で、私は内川の覚悟を見た。
内川のような歴も長いトッププロにとって、配信という公の場で「ここがダメだった」と指摘されることは、少なくとも気持ちの良いことではないと思う。
それでも、自身がこのままではダメだと思い、何かを変えるために行動を起こしたその姿勢は、プロとして素晴らしい姿勢なのではないだろうか。
それだけの覚悟を持って挑む今シーズン。
もしかすると今年は、内川にとって変革の年になるのかもしれない。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924