泥まみれの冬桜―― #内川幸太郎 、変革の年【Mリーグ2024-25観戦記 11/11 第1試合】担当記者 #後藤哲冶

嬉しい赤【赤5ソウ】引き……!
これでドラを全て使い切れば8000点。内川が、【發】を仕掛けて前に出る。

【3ソウ】を345の形で鳴くことに成功し、更に【2ピン】を引き入れてイーシャンテン。
あとは【6マン】にくっつけてのテンパイを――

「ポン」

内川から迷いのない発声が響いた。
このルートがあった。
【2ピン】を引いた直後、寿人の手番で放たれたこの【1ピン】を即座に鳴けたのは、【1ピン】ポンを決めていた何よりの証拠。

【1ピン】【4ピン】待ちテンパイ。たどり着いた。
直撃かツモれば、逆転。この悪夢のような半荘を、3着で終えることができる。

萩原から【4ピン】が放たれるも、もちろんスルー。

大介もその同巡に【4ピン】処理。この辺りは抜け目ない。
同巡内フリテンで、内川はこの【4ピン】にロン発声ができない。

それでも静かに、内川が牌山に手を伸ばす。
悟られるわけにはいかない。【4ピン】は止まるかもしれないが、最後の【1ピン】くらいは、大介がテンパイ打牌等で切ってくれるかもしれない。
その可能性を、自ら潰すわけにはいかないから。

大介が、オリた。
もう、次の局は無い。

内川の、最後のツモ番。
ゆっくりと、手を伸ばした先。

持ってきた牌を慈しむように。
泥まみれになった桜の騎士が、その【1ピン】を静かに撫でた。

トップには、佐々木寿人

勝負手でしっかりと押し切る流石の麻雀で、トップを獲得。
今年も格闘俱楽部は強い。そう思わせてくれる内容だった。

見事3着を掴み取った、内川。
そんな内川が、昨年のシーズン終了後に行った取り組みを、ご存知の方はいるだろうか。

チームメイトの堀慎吾と共に、自身のMリーグでの打牌を振り返る検討配信をしていたのだ。

この配信では、堀が内川の打牌に対して踏み込んだ意見を放ち、それを受け止め、自身の中へ落とし込んでいる内川の姿が。
この配信で、私は内川の覚悟を見た。

内川のような歴も長いトッププロにとって、配信という公の場で「ここがダメだった」と指摘されることは、少なくとも気持ちの良いことではないと思う。
それでも、自身がこのままではダメだと思い、何かを変えるために行動を起こしたその姿勢は、プロとして素晴らしい姿勢なのではないだろうか。

それだけの覚悟を持って挑む今シーズン。
もしかすると今年は、内川にとって変革の年になるのかもしれない。

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