南3局トップ目、#渋川難波 が迫られた選択【Mリーグ2024-25観戦記 11/11 第2試合】担当記者 #江崎しんのすけ

【2マン】切りは高宮の高打点に当たる可能性が低く、仮に打点が低い場合はアシストとして機能する牌なのだ。

実際に高宮の手牌にはカン【2マン】ターツがあり、これをチーする。

【8ピン】でドラ【9ピン】単騎の満貫テンパイを入れる。

このチーを見て、渋川は完全に撤退。

高宮から3副露が入り、今度は中田が選択を迫られる。

中田からすると、アガリは当然欲しいとしてテンパイすれば流局した時にオーラス満貫ツモでトップになるため、最低テンパイは入れたい。

しかし345三色のイーシャンテンのまま、手が進まず残りツモ2回となっていた。手には高宮に通っていない【1ソウ】【西】が浮いている。

すると上家の高宮からチーしてテンパイが取れる【6ソウ】が切られる。

しかし、中田はチーせずスルーして

直後、【西】を重ねテンパイを入れる。
再び【1ソウ】を切ることができるか選択を迫られる。

長考の結果、【西】を切って残りツモ1回でのテンパイ復活を狙う。

しかしテンパイを復活させることはできず、結果は高宮の一人テンパイで流局となった。

【1ソウ】は高宮に対して通っていない牌だが、手牌を推理するとかなり通りそうな牌であることがわかる。

高宮の最終手出しがドラ表示牌の【8ピン】で、自身が【6ピン】を序盤に切っているにも関わらず持っていたということは関連する牌、つまりドラの【9ピン】を持っている可能性が高い。

仮に【1ソウ】【4ソウ】でロンになる場合は【9ピン】が雀頭ということになるが、そうなるとカン【2マン】を仕掛ける前にはこんな手牌だったことになる。

これでは【8ピン】が全く機能しておらず、他家への安全度を考えても【8ピン】よりも前に切っている【9マン】【8ソウ】を残して【8ピン】を先に切るだろう。そのため【1ソウ】【4ソウ】のリャンメン待ちは考えにくい。

次にシャンポン待ちだが、これは【8ピン】【9ピン】【9ピン】と持っていたところからカン【2マン】を鳴いた形が思い浮かぶ。

一見あり得そうな形だが、この形の場合、高宮の序盤の切り順に違和感がある。注目したいのは3巡目に切った1枚切れのダブ【南】と、4巡目の打【6ピン】だ。

高宮は【1ピン】をポンしてから手出しが1回しか入っておらず、仕掛ける前とほとんど手の中が変わっていない。トイツが多く、ターツが足りている状態なら【6ピン】【8ピン】【9ピン】【9ピン】をのこして【南】を切らず、【南】【6ピン】の切り順が逆になる可能性が高い。

例えばこんな手牌。

【6ピン】【8ピン】【9ピン】【9ピン】ではなく【8ピン】【9ピン】【9ピン】を1ブロックとカウントすれば【6ピン】は残してもあまり機能せず、七対子や仕掛けを考えると【南】が重なった方が嬉しく、殆どの人が【6ピン】を先に切るだろう。

仕掛ける前に【9ピン】トイツを含む4トイツだった場合は、【南】【6ピン】【8ピン】の切り順が【6ピン】【南】【8ピン】になっていることが多い。
(直前に【1ソウ】が切られているので、【1ピン】をポンするなら【1ソウ】もポンしていた可能性があり、トイツの可能性は更に低くなる)

ただ、当然100%通るわけではなく、放銃するとラスがかなり近くなるため、ラス回避を重視してのテンパイ取らずと思われる。

この中田の押し引きの判断も、もし渋川が高宮に【2マン】を鳴かせずに高宮が2副露しかしていなかったら、テンパイ料が重要な状況だっただけに、選択は変わっていた可能性は充分にある。

当初渋川が読んでいた高宮の安い手へのアシストというシナリオ通りではなかったものの、結果として自身のトップを決める最適解になったと言える。

オーラスは早い巡目での決着となった。
5巡目、中田が【8ピン】をリャンメンでチー。

高宮から出た【中】をポンして

すぐに【9マン】をツモ

400-700で再度高宮を逆転し、2着となる。

トップまで跳満ツモ条件となった中田だが、ダブ【南】【中】三暗刻など跳満ツモの材料は残っていたが、2着とラスが近かったため手堅く2着を取りに行く。

もしトップまで満貫ツモ条件が残っていたとしたら、ダブ【南】【中】どちらかを暗刻にすれば条件をクリアできる可能性があり、トップを狙っていたに違いない。少なくとも【8ピン】チーからは発進せずまったく別の展開になっていただろう。

この絶妙な点差を作り出したのは、渋川が放った【2マン】__
一見アガリにも放銃にもなっていない目立たない一打だが、試合を決めたまさに妙手だった。

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