切りは高宮の高打点に当たる可能性が低く、仮に打点が低い場合はアシストとして機能する牌なのだ。
実際に高宮の手牌にはカンターツがあり、これをチーする。
打でドラ単騎の満貫テンパイを入れる。
このチーを見て、渋川は完全に撤退。
高宮から3副露が入り、今度は中田が選択を迫られる。
中田からすると、アガリは当然欲しいとしてテンパイすれば流局した時にオーラス満貫ツモでトップになるため、最低テンパイは入れたい。
しかし345三色のイーシャンテンのまま、手が進まず残りツモ2回となっていた。手には高宮に通っていないとが浮いている。
すると上家の高宮からチーしてテンパイが取れるが切られる。
しかし、中田はチーせずスルーして
直後、を重ねテンパイを入れる。
再びを切ることができるか選択を迫られる。
長考の結果、を切って残りツモ1回でのテンパイ復活を狙う。
しかしテンパイを復活させることはできず、結果は高宮の一人テンパイで流局となった。
は高宮に対して通っていない牌だが、手牌を推理するとかなり通りそうな牌であることがわかる。
高宮の最終手出しがドラ表示牌ので、自身がを序盤に切っているにも関わらず持っていたということは関連する牌、つまりドラのを持っている可能性が高い。
仮にでロンになる場合はが雀頭ということになるが、そうなるとカンを仕掛ける前にはこんな手牌だったことになる。
これではが全く機能しておらず、他家への安全度を考えてもよりも前に切っているやを残してを先に切るだろう。そのためのリャンメン待ちは考えにくい。
次にシャンポン待ちだが、これはと持っていたところからカンを鳴いた形が思い浮かぶ。
一見あり得そうな形だが、この形の場合、高宮の序盤の切り順に違和感がある。注目したいのは3巡目に切った1枚切れのダブと、4巡目の打だ。
高宮はをポンしてから手出しが1回しか入っておらず、仕掛ける前とほとんど手の中が変わっていない。トイツが多く、ターツが足りている状態ならをのこしてを切らず、との切り順が逆になる可能性が高い。
例えばこんな手牌。
ではなくを1ブロックとカウントすればは残してもあまり機能せず、七対子や仕掛けを考えるとが重なった方が嬉しく、殆どの人がを先に切るだろう。
仕掛ける前にトイツを含む4トイツだった場合は、→→の切り順が→→になっていることが多い。
(直前にが切られているので、をポンするならもポンしていた可能性があり、トイツの可能性は更に低くなる)
ただ、当然100%通るわけではなく、放銃するとラスがかなり近くなるため、ラス回避を重視してのテンパイ取らずと思われる。
この中田の押し引きの判断も、もし渋川が高宮にを鳴かせずに高宮が2副露しかしていなかったら、テンパイ料が重要な状況だっただけに、選択は変わっていた可能性は充分にある。
当初渋川が読んでいた高宮の安い手へのアシストというシナリオ通りではなかったものの、結果として自身のトップを決める最適解になったと言える。
オーラスは早い巡目での決着となった。
5巡目、中田がをリャンメンでチー。
高宮から出たをポンして
すぐにをツモ
400-700で再度高宮を逆転し、2着となる。
トップまで跳満ツモ条件となった中田だが、ダブ・・三暗刻など跳満ツモの材料は残っていたが、2着とラスが近かったため手堅く2着を取りに行く。
もしトップまで満貫ツモ条件が残っていたとしたら、ダブ・どちらかを暗刻にすれば条件をクリアできる可能性があり、トップを狙っていたに違いない。少なくともチーからは発進せずまったく別の展開になっていただろう。
この絶妙な点差を作り出したのは、渋川が放った__
一見アガリにも放銃にもなっていない目立たない一打だが、試合を決めたまさに妙手だった。
日本プロ麻雀連盟所属プロ。株式会社AllRuns代表取締役社長。業界を様々なやり方で盛り上げていくために日々奮闘中。Mリーグ観戦記ライター2年目。常に前のめりな執筆を心がけています(怒られない範囲で)。Twitterをフォローしてもらえると励みになります。
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