松本吉弘、沈黙の四暗刻
敗者を乗り越え思いを背負い
勝者は頂を目指す
文・東川亮【木曜担当ライター】2021年4月29日
KONAMI麻雀格闘倶楽部とTEAM雷電にとっての、朝日新聞Mリーグ2020セミファイナル最終戦。
ファイナル進出に向け、2チームともこの試合に望みをつなぎたかったが、残念ながら雷電の可能性は初戦の4着で潰えてしまったと言わざるを得ない。
KONAMI麻雀格闘倶楽部の命運をかけた一戦に出てくるのは、やはり佐々木寿人。
ファミリーは、98200点の大トップを決めた一週間前の再現を期待する。
筆者も、佐々木寿人がギリギリまで可能性を残す戦いをしてくれるのかな、と思っていた。
しかし、現実はかくも美しく、そして非情。
そんなことを感じさせられる試合となった。
4月29日 第2回戦
南家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
東1局。
ある種、この試合を象徴するようなシーンが訪れる。
松本と瀬戸熊の2軒リーチに挟まれた寿人の最終手番。
寿人は松本のリーチがかかってから受け気味に進行していたが、ハイテイ手番で再度テンパイした。
暗刻のを切って通れば、テンパイ料はゲットできる。
ここで、寿人が珍しく長考した。
は松本にスジだが、瀬戸熊には無スジ。
しかも瀬戸熊はドラ切りリーチの前の出だしがで、はそれなりに危なそうに見える。
ここで1000点のために無理をしてもいいのか、それとも1000点たりとも逃してはいけないのか。
普段の寿人であれば、押すにしろオリるにしろ、すっと決めていそうな局面。
考える姿に、この一戦にかかるものの重さが見て取れる。
寿人の選択はテンパイ取らず。
は瀬戸熊には通るものの、松本のチートイツの待ちだった。
6400、裏が乗れば12000の失点を回避。
「今日の寿人ならやれる」
そんなファミリーの思いは次局、想像もしなかったような出来事で打ち砕かれた。
東1局1本場。
松本がチートイツのイーシャンテン、寿人もホンイツチートイツと、トイツ手がぶつかりそうな場になった。
松本はを引き、打。
がすでに2枚切れておりの受けは良さそうに見えたが、ここでトイツ手1本に絞った。
そこからを重ね、四暗刻のイーシャンテンに。
次巡、松本がさらにを引いて4枚にすると、カンターツを残さず暗槓に踏み切った。
するとリンシャン牌で引き入れたのが、なんと。
待ちはと。