松本吉弘、沈黙の四暗刻 敗者を乗り越え思いを背負い、勝者は頂を目指す【Mリーグ2020セミファイナル観戦記4/29】担当記者:東川亮

この時点で山に残っているのは【9マン】が1枚だが、【3ピン】ホンイツチートイツの寿人に浮いていて、一歩進めば放銃となる可能性が極めて高い。

しかし、暗槓直後の内川のリーチに対して打てる牌がなく、寿人は【中】のトイツ落としでいったん守備に回った。

これなら松本への放銃はなさそうだが···。

「うーわー、何だよこの人!?」

実況の日吉辰哉が叫び、直後、しばしの沈黙が訪れた。

 

 

カチャカチャと点棒を触る音だけが聞こえる中、三者三様の表情が映し出される。

松本吉弘、今シーズン2回目の四暗刻ツモ。

とりわけ、KONAMI麻雀格闘倶楽部を応援する人たちはこう思ったはずだ。

「なぜ、よりにもよって今なのか?」と。

なんなら放銃していた方が、寿人と松本の点差は広がっていなかった。

全てが見えている側からすれば、そんなことすら思いたくもなっただろう。

松本のアガリは、この一撃だけにとどまらなかった。

次局は先制リーチを打って1300-2600をツモアガリ。

親番では【白】ホンイツの5面待ちをツモって2600オール。

流局を挟んで迎えた東4局2本場ではドラをツモってタンヤオドラ3赤赤の3000-6000(+2本場)をツモアガリ。

南1局は親の瀬戸熊から出アガって8000。

松本の怒濤のアガリに飲み込まれ、TEAM雷電の可能性は完全に潰えた。

寿人が親でテンパイを入れてつないだ、南2局1本場

寿人がようやく先制攻撃となるリーチを打つ。

アガって素点を稼ぎ、2着でマイナスを最小限に食い止めれば、翌日のEX風林火山にラスを引けないプレッシャーを押しつけることができる。

 

しかし、展開はどこまでも寿人に味方しなかった。

これに対して追っかけリーチをぶつけた内川が一発でツモり、2000-4000(+1本場)。

このアガリによって、KONAMI麻雀格闘倶楽部はいよいよ絶体絶命の危機に追い込まれた。

寿人はそれを、誰よりも分かっている。

無意識か、思わず唇を噛んだ。

南4局1本場

寿人は満貫ツモ、6400直撃で内川を逆転し、2着で試合を終えられる。

第1打は【8ピン】

ここは「ホンイツコンサルタント」として一色手に舵を切った。

4巡目、寿人は瀬戸熊から切られた【赤5ソウ】をスルーした。

鳴けば【中】ホンイツ赤の満貫が見えるが、他3者にも寿人の狙いは透ける。

そのとき、果たして次が鳴けるだろうか。

特に、瀬戸熊が切ってくれるだろうか。

その望みが薄そうだったことも、スルーの理由にあったと思われる。

もし上家が寿人の着アップ、すなわち内川の着ダウンを歓迎する松本であれば、アシストが期待できるために選択は変わったかもしれないが。

直後、ピンズのターツが完成。

ホンイツのためには全て切り飛ばしたいところだが、一旦残す。

ドラ2枚を引くことや内川のリーチにぶつけることを考えれば、ここで手を遅らせるのは惜しい。

10巡目、瀬戸熊が【西】を暗槓。

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