ついに連載決定!?話題騒然の女流プロ雀士【百恵ちゃんのクズコラム】VOL.3

ついに連載決定⁉︎話題騒然の

女流プロ雀士

【百恵のクズコラム】VOL.3

 

修学旅行拒否事件

そんなイカれた中学校生活を送っていたわけだが修学旅行の季節がやってきた。集団行動が元々苦手で学年全体で動くなんぞまっぴらごめんな百恵ちゃん

『修学旅行に行かない』

という選択をし先生にもそれを伝え、本気だというところをみせるため、一週間ほど学校に行かなかった。百恵ちゃんは行動で示すタイプなのだ。

その間に学校では『修学旅行前チェック』なるものがあったらしい。ピアスがあいてないか先生が耳たぶを触って確かめるという儀式だったらしい。そして自宅に説得しにきた担任と

「一緒に修学旅行いこう」

「行かない」

「行こう」

「行かない」

の押し問答をしたわけだがらちがあかず、しびれをきらした担任が

「話を変えよう。みんなやった修学旅行前チェックをするから耳を触らせてほしい」

と言ってきたのだ。そう言われたとたんに百恵ちゃんは明らかに挙動不審になった。
そう、髪で隠してはいたが百恵ちゃんの耳にはピアスが7個ほどあいていたのだ。

しかも田舎だった為、近場にたいしたピアスが売っておらず安全ピンをピアス替わりにするという昔の パンクロッカーの様な風貌だった。動揺した百恵ちゃんを先生は見逃さなかった。先程までの説得の姿勢とはうってかわって

『勝機あり!!』

と言わんばかりに一気に畳み掛けてきた。百恵ちゃん

『この戦、勝ち目なし』

と踏み、観念して隠していた耳を見せた。先生はゾロゾロと耳に付いている安全ピンに動揺しなが らも、お説教モードに突入した。

「親からもらった体に穴をあけるだなんて!」

と割としっかりめに怒られたが、

「耳を痛めてあけたんだ!わたしは絶対ふさがない!」

とまるで経産婦のような応戦をした。しばらくこのやり取りが続き、疲弊した先生が絞り出したセリフが、

「いいか。ピアスをはずさなければ修学旅行には連れて行けないぞ。それでいいのか。よく考えろ」

だった。こちらも大分疲弊していて混乱してしまったのか修学旅行にいきたくない側だったことを忘れ、何故かどうやったら修学旅行に行けるのかを考えはじめていた。
だがその日は百恵ちゃんの必殺技である「考えておく」作戦で休戦となった。 母が帰り際の先生に

「できれば来る頻度おとしてもらえませんか」

と頼んでいた。先生が自宅に来るとなれば嫌でも同席しなければならなくパチンコに行けないのが嫌だったのだろう。本当にひどい話である。結局修学旅行には行った。

 

だが先生や友達の説得に応じた訳ではなかった。それは珍しく父の言葉が響いたからだった。
修学旅行に行きたくないと籠城していることを聞きつけたのかある晩

「ちょっときなさい」

と呼び出された。

「お父さんの高校の頃の写真を見たことがあるだろう?」

ーー確かに見たことはあった。周りがみんなきのこのような髪型をしているなか、一人だけリーゼントでガン浮きしている写真だ。ーー

「あの頃はお父さんも若くてなぁ、友達と原付で九州から東京まで今でいうプチ家出?っつーやつをしたんだ。そしたら学校にバレて停学くらっちまってよぉ。停学中で修学旅行いけなかったんだよ。あー行きたかったなぁ、修学旅行。だからお前にはお父さんの分まで行ってきてほしいんだよ」

とベロッベロにお酒に酔った状態で話してくれた。“お父さんの分まで修学旅行に行く”という言葉の意味は全く理解できなかったし九州から東京への家出はプチ家出ではなく立派な家出だとは思ったが諸々飲み込んで修学旅行に行くことにした。

後日聞くと父の修学旅行先は東京だったらしい。何故そんなに行きたかった修学旅行の直前に東京に家
出したのかは謎である。そんな父や家族に育てられ、そしてこの頃に培った自由な生活が今の麻雀に生きているかもしれないし、生きていないかもしれない。

田渕百恵、当時14歳。 まだ麻雀には出会っていない。

次回へ続く!!!!?

 

【田渕家登場人物紹介】

父 コージ:元陸上自衛隊幹部高卒ながら佐官まで登り詰めるも「髪型が奇抜すぎる」という理由で100年に1度あるかどうかの異動の内示取り消しをされた経験がある。現在は三度目の暖かな家庭を築いている。

・母 イクコ:美容師。美容室を自宅で開業するもパチンコにハマり開店休業状態を約20年続けた猛者。おそろしいほど料理が下手。ツーブロックにしたことがある。近況を知らせる連絡では年下のペンキ屋さんとお見合いをしたらしい。

・姉 タエ:無職。1度も定職に就いたことがなく家賃を滞納してはクビが回らなくなりお父さんに払ってもらいに帰ってく るお調子者。過去に大きな交通事故に遭いウン百万円もの保険金を手にするが全てホストクラブに費やした経験がある。

・エリー:田渕家の飼い犬。詐病のプロ。足をひきずったり弱ったふりをしては人間に甘やかしてもらう。動物病院で『至って健康』という診断をされるとそれまでの弱りっぷりを忘れ、凛々しい顔で帰ってくる。趣味は父の顔に噛みつくこと。オスだが思いつきでエリーと名付けられた。

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