息の長い攻略法と
一瞬の攻略法
西原理恵子さんと末井昭さんと私で、今ギャンブル本を作っています。
末井さんと私の、昔のパチンコ攻略法時代の話しなども出て来ます。
「当時は攻略法がたくさん開発されたけど、山ちゃんが一番得意だったのは何?」
「羽根モノの鮭取り伝説ですね」
「攻略法あったっけ?」
「大当たりの最後のほうに、ワザと羽根に玉を入れないようにして、下にあるクルーン(役モノ)に玉をネジ込むんです。すると大当たり終了後に一瞬羽根が開くので、打ち出しの一発目をVゾーンに決めれば連チャンします。テレビ局が実戦を録画したけど、内容が過激だったので、ホールとメーカーに放送を断られたそうです」
こうしたアナログな攻略法は全国各地で同時発生するので、私以外でも発見し息長く使っていた人は多いと思います。
一方、末井さんの攻略チームは、パチンコ台の基盤をメーカーの工場から盗んで来て解析してました。
「私が盗んだんじゃないですよ。工場で働いてる人から買ったんです」
「それを盗んだと言うんです」
「いや、ロムリーダでプログラムの吸い取り(コピー)がメインだったから、相手は何も減って無い」
著作権の専門家の出版人とは思えない発言ですね。
末井さんの攻略班の威力は強烈だったんですが、読者が多い分、寿命が短かいのが宿命でした。
「まあ、雑誌一冊分の投資で、数万円勝てたんだからいいんじゃないの」
数万円どころか、西原さんはこれを友だちに教えて、サラ金の返済をさせたそうですよ。
当時は、必勝ガイド発売日には、深夜からコンビニの入荷を待つファンがいました。
また、それを印刷中の職人さんは、いち早く情報を得て大勝していたんです。
今と違って、情報の伝達方法がアナログだし、伝達速度も遅かった。
情報格差が大きい分、勝ちやすい時代だったんです。
強そうに振る舞うより
強くなるほうが簡単
「山ちゃんが出てる、昔の記事があったよ」
末井昭さんが、30年以上前に作った雑誌を整理していたら、私の学生雀ゴロ時代の記事が出てきたそうです。3ページ分のコピーをプレゼントしてくれました
私は覚えてませんが、島本慶さんの記事によると、五百円(違法)の東風戦(違法)で、アコギに稼いだ私は、競馬のノミ屋(違法)をやろうとしてたことになってます。
まさかねえ。素人の学生がノミ屋なんかやったら、お金が増える前に命が減ってしまいます。
当時、兄弟で小さなテキ屋をやっていた弟のほうに次のような誘いを受けたことがあります。
「山ちゃん、金持ってんならウチのテラ取り麻雀(違法)で、カラス金飛ばすかい(金貸し・違法)?アキニが居ない間、切り取り半分(違法)でどうよ」
もちろん冗談でしょうが、アニキが何年間か居ないのは職業柄で、切り取り半分と言うのは、回収代5割と言う意味です。
けっきょく私は、ノミ屋にも金貸しにもならずに、まっとうな商売のノリ弁屋さんになったのでした。
「山ちゃんは、俺たちからカモった金で弁当屋を開いた」
島本さんはそう言いますが、開業資金は主に借金だったので、麻雀でさほど大きく儲かったというワケではありません。
私の打ってた麻雀は、ごく小さなコミュニティだったので、お互いにだいたい性格や手の内は分かってました。
ブラフの多い中年の不動産屋さんは、仲間ハズレにされるくらい不評でした。
●強打した牌のスジ待ちが多い。
●チンイツ風に仕掛けて牌を伏せるけど、実際はノーテン。
●先ヅモしてノーテンのフリをするけど、実はカラヅモ。
●相手が受けられないほどのサシ馬を吹っ掛けるけど、自分がお金を持ってない。
ブラフが通じるのは、新しい人に対してだけで、やがてそれが読まれてしまい、却って損な結果を招いておりました。
その他にも
●降りてるフリをしてテンパイ。
●トップとと2000点差の2着の時、テンパイのフリをして、相手に無理をさせて放銃誘う。
●自分は長考するのに、相手の手が止まると急かす。
などがありましたが、本人以外には全部バレバレでした。
一方、私の師匠のパクさんのように、本当に実力のある打ち手は、あまり細かいテクニックは使わないように見えました。
●トップ目でも、リーチで転落するのを恐れない。
●棒テン即リーでもメンチン・リーチでもで模打速度があまり変わらない。
●相手の点棒は把握している。
●懐具合も把握している。
●相手によってサシ馬の上限を予め決めている。