原はわずかに間を置いた後で、
テンパイを取らずにを切った。
対局後にこの場面について司会の小山剛志さんから尋ねられた原だったが、
「ちょっと… 頭が真っ白で。パニクってます。」
精一杯の作り笑顔で言葉を絞り出す原。やがて、堪えきれずに涙が溢れ出した。
しかし、その理由は後になって判明する。
冒頭に示したポストにその答えがあった。
「のテンパイ、わかってませんでした。わかっていないぐらい頭が真っ白でした。」
最強戦のスタジオに巣食う魔物は存在する。
魔物は変幻自在にその姿を変えて近づいてきて打ち手の心を試す。
その魔物に心を試されたのが、今回は原だった。
本当に本当にありがたいお話を頂いて😭😭
11月17日最強戦ザ・リベンジに呼んで頂きました✨😭近代麻雀買い占めから約1年半
本当に思い出の強い試合となっています。
今年の3月女流新スター決戦。
本当に悔しかった。またこの舞台に立てるなんて思ってもいなかったんです。
感謝の気持ちを忘れずに… https://t.co/e0mfKfixpE— 原えりか (@hara_erika_) October 21, 2024
原は約100万円ものお金を使って近代麻雀を買い占め、さらにその後の対局を勝ち上がって文字どおり自らの手でこの道を切り拓いた。
まだ実績があまりない原にとっては、2度とないかも知れない大舞台。
3月の女流新スター決戦に敗れて一旦は潰えたかに見えた最強位への道が、ザ・リベンジでかろうじてつながった。
もう一度、あの舞台に立てる。
目の前に転がってきたチャンス。
何としてでもモノにしたい。
あるいは、その思いが走って焦燥を生んだのかも知れない。
卓に着いた原は緊張という霧の中にいた。
霧の中で先制テンパイに気づかなかった原を、最強戦の魔物は見逃さない。
沢崎が高め三色のテンパイを入れてリーチを放つ。
直後の原。
2巡前にのテンパイを取らなかった原に再びテンパイが入った。
しかし、出ていくは沢崎の高めだ。
言うまでもないが、2巡前にテンパイ即リーチとしていたら、このは出ていく牌ではない。
「リーチ。」
原はを打ち抜くが、待っているのは死神の鎌。
無情にもそれがマムシの手によって振り下ろされる。
リーチピンフ三色に一発と裏ドラが乗って12,000の放銃。
平静を装って粛々と点棒を支払う原だったが、この放銃をきっかけに坂道を転がり落ちるように点数を失い、惨敗を喫した。
この場面をご覧になった皆さんは、どのようなことを感じただろうか?
「プロのくせに」
と、原のことを蔑む方もいるだろう。
しかし、この舞台を目指す方にとっては他山の石とされた方が良いと私は思う。
報われなかった渋川難波の慧眼…そして、多井隆晴の身に何が起こったのか?【Mリーグ2024-25観戦記 9/27】担当記者 千嶋辰治