──セトが本気になったら
こんなもんじゃない
盟友から引き継いだ
魂のバトン
【決勝卓】担当記者:ZERO 2021年12月12日(日)
最強戦は麻雀界の有馬記念だ。
豪華なメンツ、仰々しいBGM、眩い光。
最強戦の決勝卓が始まると「ああ最強戦が… そして今年が終わるんだな」と実感し、なんだかもの悲しくなってしまう。
プロアマ問わず、誰もが「この夢の舞台で勝ち切る」という夢を抱いたはずだ。
3000人はゆうに超える参加者の夢は、1つまた1つと消えていき、残ったのは4人の夢だけとなった。
「いざ、対決!」
開戦を告げる鐘が鳴り響いたら、もう誰にも時間を止めることはできない。
ツモは戻らない。局も戻らない。
あとはただ1人の勝者が決まるのを見守るのみ。
東1局。
始まってすぐの2巡目にテンパイを入れる女がいた。↓
一瀬だ。
2巡目のカンリーチもまずまずだが、この手にはまだ伸びがある。
2巡目だからこそ、一瀬はを切った。
一瀬由梨。
女流プロ最強新世代の予選会から勝ち抜き、初出場ながらこの決勝卓まで駒を進めた。
昨日行われたファイナルの初日では国士無双をアガるなど、乗りに乗っている若手女流。
黒沢咲に似ているからと付けられた「裏セレブ打法」の通り名を背負っている彼女が、こんなカンのテンパイなんて取るわけがない。
すぐにドラのをツモって先制リーチ。
一気に主導権を握るかと思われたが、周りの3人が握りつぶし、1人テンパイで流局した。
1局挟んで東3局は、親の瀬戸熊が
絶好のペンを引き入れ、高めツモ6000オールとなる超勝負リーチ!
続く1本場も
「きた! こんな引くか4枚目! 感触しかない! 感触の鬼!」
日吉の実況も異次元に入るくらいの絶好リーチを打ち放つ。
誰の目にも赤いオーラが見えるんじゃないかくらいの気迫でツモリにいく瀬戸熊。
そして2回ともリーチをかけた時点ではアガリ牌が山に残っていた。
…しかし、そのアガリ牌は脇に流れて2局とも流局となった。
続く2本場も、全員に勝負手が入っている中
一瀬が役牌のみの300500。
打点こそ低いものの、相手の勝負手を潰し、たまった供託をかっさらう重い重いアガリ。
誰かが抜け出そうとすればそうはさせじと周りが抑えつける。
全員の勝ちたい気持ちがぶつかり合い、渦巻き、重苦しい展開になっていく。
卓上は、噴火寸前のマグマのようにぐつぐつと煮えたぎっているようだ。
──しかし、物語はここから大きく動いていく。
醍醐大の物語・一生忘れられないボーンヘッド
遅咲きの大魔神、醍醐大。
その実力は認められながらも、なかなかタイトル戦で勝ちきれなかった醍醐はもうベテランの領域に入りつつある。