もともと「麻雀の強さ」への探求心が強く「エンタメ系には自分は向いていない」と語る醍醐。次々と同期や後輩が活躍する姿を、一家の父のような優しい表情で見守りながらも、複雑な心境だったはずだ。
転機は急に訪れた。
昨年BIG1カップを獲ったのを皮切りに、悲願だった最高位を獲得。
この最強戦でもタイトルホルダー頂上決戦で実力派のタイトル保持者7人を退け、ファイナルの決勝卓まで勝ち続けてきた。
どれだけ負けても腐らず、ただただ麻雀の研究を続けてきた醍醐が活躍しだしたのは、必然だったと言えよう。
個人的に同じサウナ好きとして、同じ天鳳プレイヤーとして、応援しながら見ていると、その醍醐はいつになく積極的に動きだした。
東2局のこと、
醍醐はこのを一鳴きする。
まだ形は決まっていないが、トイトイやドラ引きなどで後から役はつく。
そして次にをツモると…↓
ホンイツかトイトイか、はたまた小三元か。難しい手牌だが、一番鳴きにくそうなを払いながらツモに聞く構え。これが…
解説席が驚いたのは次局のこと。
4人の中で、このをポンするのは醍醐だけではなかろうか。
相手に決定打をアガられる前に、自分で局を進める!
そんな意思を感じる仕掛けだ。
テンパイを入れるものの、さきほど紹介した瀬戸熊の超勝負手待ちのリーチが入る。
そして…
日吉「うわー! 掴んだ! ゴッパーだ!」
近藤「あぁ…」
解説席の落胆の声が漏れたその瞬間、醍醐は
もちろんは通っていない。
日吉「嘘だろう!?」
金「嘘でしょう?」
近藤「やめてよ!」
たしかにはが3枚見えているのでワンチャンス。手牌の7枚の中では一番通りやすい牌である。そしては見るからに危険な牌だ。
しかし瀬戸熊の捨て牌が強く筋が多く残っていること、自身がリャンメンテンパイしていること、を1枚通しておけばもう1枚切れるのでオリやすくなることから、私だったらを押してしまいそうだ。
しかし醍醐は決して甘えなかった。
たとえオリ打ちやアガリ逃しになってしまおうとも、一番通りやすい牌を切って、親への致命傷は避ける。ここでを抜く胆力があるからこそ、積極的な仕掛けが成立するのだ。
ともすれば誰かの独壇場になりそうな戦いを、息をするのも重苦しい展開に持っていったのは醍醐だったのだ。
しかし、その醍醐が信じられないエラーをする。
東4局。
醍醐はこのを延々と切らなかった。↓
醍醐はなぜ手を崩してまでを切らなかったのだろう。
それは…
あの宮内こずえが仕掛けたからだ!
仕掛けた時の本手率が高い宮内。
その腰の重い宮内が仕掛けた上にピンズを余らせている。
たとえ1枚切れだろうと、このは切らない。
俺は墓までこのを持っていく!
醍醐はを抱いて死んだ。
誰もがそう思った数巡後だった。