だから、こそ。
こんなすぐに引くは、止まるべくもない。
「12000」
「……はい」
あまりにも重い裏ドラ1枚。
岡田の肩に、ずっしりと鉛のようにのしかかった。
南4局
トップまでの距離は、跳満のツモアガリ。
2着までは、8000の出アガリで足りる。
南2局まではトップだっただけに、この距離がどうしても遠く見えてしまう。
それでも、この赤引きで光が見えてきた。
岡田は切りを選択。
ドラ受けこそ無くなるが、タンヤオ三暗刻赤、タンヤオピンフイーペーコー赤などを狙った打牌。
を引いてテンパイだが、ここはを切ってテンパイ外し。
赤等を引いて来るか、萬子の部分の変化を狙う。等を引いて来れれば最高の形だ。
が、岡田が引いて来たのはだった。を切られた直後。
これではタンヤオが崩れてしまい、安目のツモだと裏が無ければ2着目の瑞原すら逆転できない。
ということで、これも外す。
まだ、逆転トップのルートは諦めない。
を引いて再びテンパイも、これも納得のいくテンパイではない。
を切って一旦単騎のテンパイを取り、にくっつけてのメンタンピンリーチを目指す。
もどかしさが募る。
ツモることのできる山が段々と減っていくのを見つめる時間は、こんなにも苦しい。
12巡目に、ドラのを持ってくる。
もう時間的猶予は無い。
良い待ちとは言えないのは当然わかっているが、このドラ待ちに岡田は託した。
時間をかけてたどり着いた、トップまでのルート。
1枚、ある。この1枚を引けさえすれば、今シーズン初トップ。
どうか、ツモらせて――
しかし、岡田にツモ番すら来ることはなく。
岡田が静かに目を伏せる。
醍醐のツモアガリで、終局後、対局会場は橙色に染まった。
終局後、岡田はチームメイト達と対局を振り返っていた。
【#Mリーグ2024-25】2025/01/13 一戦目 #岡田紗佳 選手 感想戦 より
その中で、話題に上がったのは醍醐に放銃となった南2局1本場。
あのテンパイになればは打つ。それは当然。
が、その前の発を切ったところではマンズのリャンメンに手をかけた方が良いと堀は指摘する。
その言葉を、岡田は真剣な表情で聞き入っていた。
3年前とは、岡田自身も大きく変わった。
麻雀の酸いも甘いも全て身に受けて、雀力も、精神力も向上している。