名もなき最終局──茅森早香と萩原聖人、最後に語った想い──【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 11/21 第2試合（麻雀LIVEチャンネル）】担当記者 小林正和

一方で、を鳴いている太は萩原のリーチを受けて

ここからを切った！

それはカンの受け入れを自ら消してまで、を残す選択だった。

普段の太なら、をそこまで危険牌とは見ていなかったはず。その理由は、萩原が２巡目に放った の所に隠れていた。

実は、その時点で はすでに２枚切れとなっており、普通ならばのターツ固定なんてまずしない。つまり、このは、いわば “チリ”みたいな放銃率の牌という事。

それなのに、太はこの牌を手の中に置いた。
一体なぜだろうか？

その答えを求め、振り返り配信を確認してみると予想外の答えが返ってきた。

渡辺太
「優さんの序盤の切りのあとの、を挟んだ切り。
これでを持っていそうって読みが立って。
さらに、その後の切りも重なってが縦に固まってるイメージが強くなったんだよね。」

つまり、場に放たれている３枚のと複数もたれているの存在が、自身のアガリ率の低下を強めているという事。

続けてこう語った。
「11巡目の 手出しがさ、マンズ下を相当持ってそうってイメージをさらに強めちゃって。
例えばみたいな形を想像しちゃったんだよね。そうなるとも自信なくなって、結果切りになっちゃいました。ちょっと弱気すぎたかも。」

細かい点差の攻防や、競り合いの局面にめっぽう強いイメージの太。

だが、この日はその強みがなかなか発揮できない展開となって局が進んでいくのであった。

 

一巡、一牌で運命が変わる名もなき最終局

そんな均衡を崩せないまま、南1局、南2局と静かに進んでいく。そして、ついに南4局オーラスを迎えていた。

点数状況はこちら。

優だけは条件がやや厳しく、トップにはハネマンツモが必須。だが、それ以外の３人はほとんど横一線と言っていいだろう。もちろん、アガった者が勝利という栄光を持ち帰る事ができるのだ。

誰が抜けてもおかしくない。
そんな運命の最終局が今、始まる。

最初にテンパイしたのは、親番の茅森。

・ドラ・赤 7,700 点の待ちである。
どこから出ても大きく抜け出せる手だ。アガれば、次局ノーテンでもトップが見えてくる。

天才的だったのは、くっ付きのイーシャンテンまで、太に鳴かれるを手の内に収めていたこと。最後まで、察知力のアンテナを張り巡らせた天才的な高打点ルートであった。

そして、そのテンパイに吸い込まれそうだったのが、こちらの萩原の手。

を引いた時、見た目の枚数だけ見れば、まずカンに受けるだろう。
そうなれば、場に出ていくのは真ん中にぽつんと残った。これは茅森のアガリ牌である。

同様に、を引いても、を引いても流れは同じ。つまりを先に引かない限り、このはいずれ卓上へ出ていくのだ。

そしてこちらは、その萩原の上家の太の手牌。

を鳴いてイーシャンテンの所に、ツモで十分形となった。打牌候補は、 orだろう。

…か！？ あれ！？

という事は、ここでを選ぶと下家の萩原にチーテンのカンテンパイが呼び込まれる。つまり、それはが離れていき、茅森のアガリを意味しているではないか。

そう、ここが最初の運命の分かれ道…

太は…

鳴かれないを選んだ！
その確率ざっと50％だろう。

その瞬間、各チームのサポーターの心は、歓喜と悲鳴が入り混じる、あの独特のざわめきに包まれたに違いない。