11月15日(火)第2試合が始まるとき、赤坂ドリブンズのチームポイントは-338.0ptと大きくマイナス。
もちろん全体の最下位であり、ここまで園田賢以外にトップがないという状況。
浮上のためにはもちろんトップの量産が必須で、退路のない死地に降り立ったのが鈴木たろうだった。
チームは今期ファイナル進出がかなわなければ選手入れ替えとなる。
しかしこの試合もU-NEXT Pirates・瑞原明奈が序盤から大幅にリード。
東3局5本場のたろう親番の時点では、瑞原59700に対したろう16000と、43700点もの差をつけられていた。
そしてたろう3巡目でこの厳しい手格好である。
たろうの親番は為すすべなく流れるだろう。この回もまずトップは無理だ。
そう眺めていたところへ、瑞原が打った2枚目の。
「ポン」
世界中の誰もが食指の動きそうもないその牌に、たろうは食いついた。
この手はメンゼンならチートイツくらい、役牌が重なれば方針は立つが、そのときにはがもうない。
それならばコーツの1メンツを確保しておいて、役牌が重なったときのメンツ手、あわよくばトイトイでの打点を目論んだのである。
すぐにも鳴いてこの形。
を持って来て、さらに役牌受けの目一杯。
どうだろう。
目を覆わんばかりの汚さだと、断じる人はいるかもしれない。
しかしこれは、どんなに厳しい手牌でも、どんなにトップと離されていても、
決して諦めないたろうの執念を表したような、泥臭くもあり美しくもある仕掛けとは見えないだろうか。
諦めない、という言葉や精神自体は簡単なものだ。
それでも、気合を入れてツモ山に手を伸ばすことだけがそれに沿った行為ではない。
途中瑠美のリーチを受けるも、瑠美の現物でトップ目瑞原からこのアガリ。
3900は5400の直撃である。
この半荘、東場の親番が落ちてもたろうは南場で瑞原を追い上げ、追い上げ、
ついに43700点差をまくってしまった。
本当の意味でトップを諦めない、追われる側からすれば恐ろしいほどの強欲ぶり。
ああこれが、鈴木たろうだったよなと思い出した。
そして11月17日(木)第1試合でも、私たちはその真髄を見る。
東4局時点で渋谷ABEMAS・白鳥翔が60000、たろうは15000の45000点差。
これもひたひたと白鳥に迫り、南3局にして13400点差まで追い上げていた。
西家のたろうはもう親番がないが、西家でこの形だ。
残りは2局。たろうはこのとき、マンガン程度なら白鳥以外からは見逃す心づもりだったという。
東家は点棒がなく、親番が続行されるのは望むところ。
むしろ、この局を脇からのマンガン程度で終わらせることの方が、トップが遠ざかってしまうと。
たろうの手は進み、チーの末14巡目にこのテンパイ。
ドラのはションパイ。役牌のは1枚切れ。
を切るとでマンガン、切りはカンのチャンタでハネマンだ。
はポンされているとはいえ、マンガンだけなら切りでリャンメンにすれば見た目4枚で最大の枚数になる。
たろうが選んだのは、打のドラとのシャンポン待ち。
どちらでもハネマンだ。
は、南家北家にはなさそうだが、東家のクイタン仕掛けにはわからない。
ただドラは東家にないし、東家はドラでもでも切らざるを得ない。
次巡たろうはアガリ逃しとなるを持ってくるが──、