ストレスの果てに宮内こずえが取り戻した5年前の忘れ物【麻雀最強戦2026 女流プロ下克上合戦】観戦記【決勝卓】文:うめきち

待ちの【1ソウ】は飯嶋の現物だった。高宮は冷静にヤミテンで構える。

ここからの高宮が見事だった。次にツモってきたドラの【7ピン】を打ち切れず、いったん回る。

勝負手になりかけた手を、あえて崩す選択だ。ところがツモ【4ピン】でまた張り返す。

ここぞとばかりに勝負のリーチを放つ。

その一発目、【1ソウ】をつかんだのが飯嶋だった。

リーチ一発ピンフドラドラ裏。【1ソウ】が裏ドラに乗り、ハネ満12300点である。【1ソウ】のTシャツを着た飯嶋が、【1ソウ】で放銃し、その【1ソウ】が裏ドラになる。ドラマの神様、さすがに意地悪がすぎないか。

宮内はまたしても親番でのチャンスを逃した。ストレスは、ここで頂点に達していたはずである。

 

気合が牙をむいた南3局

南3局は金宮の最後の親番だった。ここに最後の望みをかけていた。高宮は積極的に鳴き、自分のアガリで局を回していく。その流れの中で、金宮は違う山からツモってしまった。

誤ツモ、アガリ放棄である。

最後の親にかけていただけに、あまりにも痛い。勝負どころで高宮に鳴きでせかされ、わずかに冷静さを失ったのか。気合が入りすぎたのか。金宮の表情には動揺の色が隠せなかった。がっくりと肩を落とす金宮。

試合後、金宮は「気合入りすぎてやらかしました」と反省し、「未来につなげるしかない」と前を向いた。あの気合の闘牌が、オーラスで見られなかったことが私は悔しい。

 

外す勇気と降りる勇気

南4局2本場。金宮はハネ満ツモ、宮内は倍満ツモが条件の局面である。

親の飯嶋は先制テンパイを入れたが、待ちが悪い。リーチとは行かず、タンヤオやイーペーコーを見て、いったん保留した。

次のツモで【1ピン】【4ピン】待ちの好形に変わり、そこで初めてリーチを打つ。

元太は、テンパイを外す勇気をほめた。「美しいテンパイだ」。リーチを急がない選択は、地味なようで、いちばん怖い。

神がかったツモでシャンテンを進めた高宮も、チーでテンパイを入れて飯嶋との一騎打ちに入る。

高宮もここでアガれば勝負を決められる。

ところがドラの【7ピン】をツモった瞬間、親のリーチに打ち切れず、オリた。

押していても高宮のアガリ牌はなく、手の内には飯嶋のアタリ牌まで流れ込んでいた。結果論だが、正解のオリである。流局となって、勝負は持ち越された。

ところで私は、飯嶋のTシャツがずっと気になっていた。他の最強戦に出る女性選手が華やかな衣装で現れるなか、彼女の【1ソウ】のTシャツは、スーパーへ買い物に行くような普段着に見える。紹介動画で二郎のラーメンをすすっていた時と、同じTシャツだ。

これは私の推測だが、憧れの大舞台でも普段着の麻雀を打ちたい、麻雀への愛をTシャツ一枚で表したい、そういう思いなのではないか。華やかな舞台に普段着で乗り込む。これも立派な勇気だと私は思う。

 

分かれ道の【3ピン】と【5ピン】

南4局3本場。高宮はカン【3ピン】待ちかカン【5ピン】待ちかの選択を迫られた。

選んだのは【3ピン】。だがツモってきたのは【5ピン】だった。

流局し、親の飯嶋が鳴いて形式テンパイを取り、連荘となった。

高宮は試合後、「最後アガり切る力が足りない」と反省を口にした。

悔しいまくられ方だったと思う。ただ、東1局の【4ソウ】を止めた手。南2局の【7ピン】を回った手。そしてオーラスのオリ。ここまで見せてきた勝負勘は、確かに本物だった。

 

【2ピン】が運んできた答え

南4局4本場。飯嶋が【1ピン】をカンして、新ドラは同じ【4ソウ】になった。

ドラが乗りに乗った宮内の手は、タンヤオチートイツ、ドラ4。

ハネ満をツモるか、高宮から直撃すればトップである。

長考の末、宮内はリーチをかけなかった。

リーチすれば倍満が確定し、どこからでもアガれる。だが待ちが悪い。ここでの長考が、最大の決断だった。

そして【5ピン】をツモる。【2ピン】【5ピン】待ちのリャンメンになった。タンヤオピンフイーペーコードラ4。「【2ピン】【5ピン】を引いたらリーチと思っていた」と彼女は語る。迷わず、リーチ。

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