逢川は、ピンフドラ1赤3のテンパイを入れた。
待ちは
と
。リーチをかければハネ満、ツモって裏か一発が乗れば倍満まである手だ。もし倍満ツモならトップになれる。
そして、62秒の長考。逢川が選んだのは、ヤミテンだった。
次のツモは、松本のアタリ牌の
。
逢川はそれを切るしかなく、
松本に2000を打ち込んだ。
なぜリーチしなかったのか。リーチ棒を出して4位に落ちたくなかったのか。松本からの直撃で2着を狙ったのか。トップのポイントが大きいMリーグなら、1位を狙ってリーチを打つべきだった、という意見もある。正直に言えば、私はリーチが見たかった。でも、長考のあいだ逢川が背負っていたものを思うと、胸が締め付けられた。ここでリーチ棒を出せば、逢川は16300点。同点の下石の下、4着目に落ちる。4位のない人が、自分で自分を4位に押し出す1000点だ。
リーチをかけていても、引いた
は切るしかなかった。放銃は同じだった。ただ、出すか出さないかで、1000点だけは違った。
1本場、逢川は下石からダブ
の2300をアガり、
3着で終わった。今季の4位は、まだゼロのままだ。
それぞれの夜
堀は、リーチ0回でアガリ5回。鳴きとダマで刻み、どっしりと5勝目をあげた。松本は連投で2着、2着と、ラスが続いたアベマズを踏ん張らせた。下石は東1局に
を重ねてリーチを打ったが、流局。その後は配牌もツモも恵まれない。それでもオーラスは、あきらめずにチャンタで鳴いた。昨季MVPの意地だ。
4位のない場所の重さ
堀は試合後、南3局のヤミテンについてこう語っている。
「あの3位4位が競ってる点数状況でオーラス迎えた方が2着以上を確定できることが大きいと考えた」
つまり、あの同点のオーラスは、堀が自分の勝ちのために整えた景色でもあった。堀の選択には理由があり、その理由は言葉になって届く。逢川の理由は、まだ私の手元にない。だから私は、わかっている事実だけを並べた。4位のない逢川が、同点のオーラスで、リーチ棒を1本出さなかった。
ジェッツは勝てなかった。デイリーダブルも、届かなかった。それでも、あの1000点は、逢川がここまで守ってきた「4位のない場所」そのものの重さだったと、私は思っている。その重さを軽く出せなかった人を、責める気にはなれない。むしろ、重さを知る人が次にリーチ棒を出す瞬間を、胸を躍らせて待ちたい。
4位のない人が出す、リーチ棒1本の重さを、私は忘れない。

麻雀歴30年。創設以来のMリーグファン。
麻雀界の深掘り考察をnoteで発信中。













