西原理恵子 & 山崎一夫 手っ取り早く 一人前になるには!?

手っ取り早く 一人前になるには

メンタンピン・一発ツモ・三色・ドラドラ、チップ3枚オール。ラストーッ!」

ゲームとしてもギャンブルとしても、最高の瞬間です。
さて、専門用語だらけのこの呪文は、麻雀をしない人にとっては、半分も理解できないんじゃないでしょうか。

特に、メンタンピンなどの中国語が短縮されている部分は、中国人ですら分からないと思います。

こうした専門用語の難しさや、日本式ルールの複雑さが、麻雀の敷居を高くしている反面、いったんマスターしてしまうと、そのゲーム性の深さや、ギャンブルとしての刺激にハマってしまう人も多いようです。
と言うか、ぼく自身がその一人のなんですけど。

麻雀特有の複雑な点数計算も、敷居の高さとおもしろさを、演出しています。
ハンと言う、得点が倍々で増える計算方法は、ギャンブル性を高くする。

裏ドラが1枚乗るのと乗らないのでは、チップや順位変動も含めると大違いですもんね。
ぼくが経営している「雀荘たぬ」の女性クルーの一人は、働きだして5年目くらいに、

「メンタンピンのメンて、リーチのことだったんですね」

と目を輝かせておりました。
専門用語はちゃんと覚えましょうね。

専門用語を的確に使えるようになると、なんとなくその分野一人前になったような、あるいはそのコミュニティに仲間入りできたような気分になれます。

若者言葉やヤクザ用語や、ギャンブル用語やビジネス用語やIT用語など。
基本的な専門用語は、さらに上位概念の用語を組み立てる部品になるので、マスターは必須。

「アイダ4軒とは、裏スジが重なったもの」

などですね。
専門用語と並んで、ぼくたちをいっぱしな気分にさせるのが、ギャンブル独特の手なぐさみ。 盲牌や小手返しなどがそれ。

ルーレットのチップでやる「チップ回し」「シャッフル」
バカラのベットオーナー(一番多く賭けた人)だけに認められる、カードの絞りも。
いかにも遊び慣れたベテランという感じです。

ただし、技術が中途半端だったり、失敗したりすると却って恥ずかしい。
たとえば盲牌が難しいマンズ待ちでリーチをかけた時、マンズ以外は盲牌でツモ切りできるけど、マンズは自信がないので目で確認し、アガリ牌でないと慌てて切るとか。

「ハハ~ン、マンズの下だな」

待ち牌がバレてしまうことすらあるんです。
小手返しに失敗して、自分の牌を見せてしまうだけでなく、ヤマを崩してしまったり。

「盲牌とか小手返しってカッコいいかな?」

女性クルーに聞いてみました。

●完璧にできると、麻雀も強いのかなと思う。
●盲牌の時間が長すぎると、見ればいいのに、て感じ。

対人ギャンブルは強そうに見せるのが得?

対人ギャンブルには、機械相手のギャンブルと違って、ブラフ(ハッタリ)という独特の技術があります。
有名なのはポーカー。

本来は手役の強さを競うゲームですが、たとえ弱い手役でも、強そうに振舞って相手を降ろしてしまえば勝ち。
パチンコや麻雀などと違って、ゲームの途中にレートがとんでもなくアップしてしまう、超危険なシビれまくりのギャンブルです。

レートがあまりにも変動するので、勝率はあまり関係なく「大勝ち・小負け」のパターンで現金収支をプラスにしなくてはいけない。
大富豪が一夜にして破産してしまうほどの、まさにギャンブル中のギャンブルなのだ。

麻雀も対人ゲームなので、ある程度のブラフはある。
親の愚形リーチがその代表で、

「降りて貰ってる間にツモれればラッキー」

て感じです。
麻雀でメシを食っている雀ゴロには、自分自身をブラフ化してる人を見かけます。

●とにかく早打ち。
●盲牌、小手返し、カチャカチャ。
●点棒の申告や支払いが早い。
●放銃しても納得顔。
●自分だけに分かる安全牌で、勝負してるように見せる。
●強打してのヒッカケ。
●「今日はこれくらいでカンベンしてやる」と、負けて帰る。

むかし、まだ手積みの麻雀卓しか無かったころ、もちろん点数表示も無し。
エロちゃんと言う、ものすごい名前の麻雀打ちがいたんですが、彼はオーラスまで全員の点棒状況を把握していました。

当時ぼくは東風戦しか打ってなかったんですが、たまに東南戦を打つと、点棒状況が良く分からない。

「エロちゃん、オーラスだけど、トイメンは何点持ち?」

バイオ点数表示器です。
ブラフのつもりは無いようでしたが、誰もがエロちゃんには敬意を払ってました。

麻雀に対する専門的な知識や技術は、勝敗に大きく影響するし、彼のように他のプレイヤーの尊敬を集めることができるかもしれません。

●実際の強さが自然に表に出て勝負にプラスに働くのがベスト。

「カッコいいプレイヤーと、そうでないプレイヤーの特徴を挙げてくれないかな」

再度女性クルーたちに聞いてみました。

●不潔なのは論外、清潔感がある人がステキ。
●負けた時に人がらが出ると思う。不機嫌になったり、周囲に当たる人はちょっと。
●点数計算の間違いなどを、親切に教えてくれたりすると嬉しい。
●振り込んでくれる人。
●店の前で出待ちされるとイヤ。
●しつこいメアド要求。
●金払いのいい人。

キャバクラか!

(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2011年4月15日号)

●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/

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