ドラが3枚。が鳴ければ親満確定である。
しかし鳴く必要はなくなる。
2巡目、を持ってきたからだ。
ここで一気に引き離すか?
しかし園田がテンパイしている気配がない。それより染め手の瀬戸熊が怖い。
白鳥はオリを選択し、
を切っていく。
私の印象だが、7、8年ぐらい前の白鳥は、メンゼン守備型のイメージがあった。鳴きは損なことの方が多い、という考えだ。
それが今や「供託泥棒」や「魔法少女」やいろんな二つ名ができたが、やはり基本は守備の人なのではと思う。
だからのアンコ落としは自然なことだろう。いや、白鳥でなくてもこの手順は普通というと語弊があるが、選択肢として当然ある定跡手順である。しかしこれに批判的なコメントを数多く散見した。
野球と同じで、勝っている白鳥のファンは「これでOK」。負けている園田のファンは「逃げるな」。どっちでもない中間派は「まあわかるけど、どうなんだろう?」と少し園田寄りになったのではないだろうか。
もしもの世界。ここで白鳥がアガりに向かって、園田にまくられてしまったら?
「ほら白鳥。だからダメなんだよ」
「なにが復調だよ」
と叩かれるはずだ。
白鳥は勝つために、この「アンコ落とし」の手順を選んだのだ。
結果、白鳥と園田の5万点持ち同士の殴り合いは、白鳥が制した。
終局後、
園田はヘトヘトになり、
滝沢は淡々とし、
瀬戸熊は目頭を抑え微動だにしない。瀬戸熊の今日の2戦2ラス、2戦目は箱下。この結果は受け入れがたく、耐え難いものだろう。
最後のインタビューで白鳥は
「よっしゃ!」
と叫んだ。感情を吐き出した。
前戦までの個人成績が、トータル-183.0ptの21人中20位。他人のことなど考えている余裕などなかったはずだ。
それでも白鳥はプロとしてサービス精神を旺盛にし、批判も受け止め、自分を信じ、勝った。
なにせABEMASは開幕当初ブッチ切りの1位だったのだ。それがプレーオフ争いまで落ち込んでいる。
これからもっと上に行くには、「伝説の1局」を作って行かなければならない。
どんな局なのか? それはわからない。わからないが、白鳥が金髪を輝かせ、魔法少女の点棒ステッキが舞ったとき、その局が生まれるはずだ。
今回はまだ、想定内の麻雀だ。「伝説の1局」が生まれるまで、傷つきながら体当たりで戦うしかない。
彼はまだ、魔法少女はまだ、修行の真っ最中なのだ。
ちなみに冒頭の「ナギ」。これはNMB48・渋谷凪咲の「なぎ」からとっています。この前地上派で放送された「さえぴぃのトップ目とったんで!」にも出演していました。
その渋谷凪咲がやったロケで「シメのコメント中、大蛇に首をシメられて落ちる」という伝説の回がある。
言っている意味が分からないかもしれないが、本当にそんなことがあったのあだ。アイドルがヘビに首をシメられて膝まづく、そんなロケがあったのだ。
僕はこの回が大好きで、色んな人に見せた。そして見せた人全員、100%笑った。滑り知らずのロケ映像なのだ。そしてその映像を見た人は彼女のことを「ヘビでオチた子」と覚えてくれる
「私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください」
こんな奇跡の言葉は、まだいらない。作ろうと思っても作れない。
大蛇と戦い、白目を剥く。この姿勢が人生を楽しくする。
勝者と敗者を決めるMリーグだが、その中でもそんな敗者も魅力的な死闘、そして伝説を見たい。
負けて悔しさを我慢することはない。
泡を吹きながら負けてほしい。
涙は勝者のためのものじゃない。敗者のためのものなのだから。
花崎圭司(はなさきけいじ)
放送作家・小説家・シナリオライター。映画化になった二階堂亜樹の半生を描いた漫画「aki」(竹書房刊)の脚本を担当。
◆大和証券Mリーグ2018 7チームが各80試合を行い、上位4チームがプレーオフに進出するリーグ戦。開幕は10月で翌年3月に優勝チームが決定する。優勝賞金は5000万円。ルールは一発・裏ドラあり、赤あり(各種1枚ずつ)。また時間短縮のために、全自動卓による自動配牌が採用される。
(C)AbemaTV
近代麻雀戦術シリーズ新刊情報
「麻雀強者の0秒思考」
著:ZERO
大好評発売中!!!!
Amazonでの予約はこちら→「麻雀強者の0秒思考」