進む勝又、ブレない小林、耐える瀬戸熊、迷える魚谷、運命の“Xデー”に笑うのは…【熱論!Mリーグ】

熱論!Mリーグ【Tue】

進む勝又、ブレない小林、

耐える瀬戸熊、迷える魚谷、

運命の“Xデー”に笑うのは…

文・ZERO【火曜担当ライター】2019年1月8日

 

あなたは予選最終日がいつかを知っているだろうか?いわゆる7チームから4チームに絞られるXデーのことだ。

それは2/12(火)である。もう1か月後のことだ。正月を挟んで再開したばかりのMリーグだが、泣いても笑っても来月の今頃には3チームが姿を消すことになる。

70%を消化したというのに、大接戦だ。全チームにファイナル進出、そして予選敗退の可能性があると言っていい。

競馬で言うと4コーナーを回り直線に入っての叩き合いと言ったところだろうか。

まさに正念場であり、今夜はその正念場にふさわしい戦いが繰り広げられた。

2回戦のことだった。

東1局。まずはドリブンズと首位を争う風林火山・勝又健志の選択。

勝又はピンフドラ1をテンパイ。これをダマテンに構える。

通常、先制のピンフドラ1は借金してでもリーチしろ、と言われている。これをダマに構えた理由は3つあると思う。

1・ソウズが高い

魚谷がをポンしてソウズに走った場面だった

2・親の小林が早そう

役牌を切り出したあと、と余っていて、今にもリーチがかかりそう

3・チーム事情

まずは残留を確定させることを優先。ファイナルでは「ポイントは半分にして持ち越し」となる。残り試合が少なくなった今、ここで無理をしてptを稼ぐ意味は薄い。

実際、5秒後に

親の小林からリーチが入り…

勝又は危険牌を掴んでオリてしまう。

1つ1つの要素だけではダマテンに構える理由としては弱いが、3つ重なったところで判断も覆ったのだろう。

 

続いての東2局も、勝又の選択が非常に印象的だった。

この手牌から何を切るか。

私ならを切る。まずがあることで、678の三色にはならない。一番弱い孤立牌を切る、というシンプルな理由だ。

しかし勝又は

場を見渡してを切ったのだ。

たしかにピンズ、特に上部分は安い。(たくさん切られている⇒使い辛い)

そしてマンズの下は高い。(みんな使っている)

高い色を嫌い、安い色に寄せたのだろう。

ダイレクトのツモは痛いが、ツモはよりよいイーシャンテンに前進できるので裏目のロスも最小限、それでピンズの4~8までをキャッチできるなら…という判断だろう。

この局はすぐに親の魚谷が1000オールのアガリ。

勝又は軍師と呼ばれるだけあり、中盤に差し掛かる前あたりから、チーム戦を意識した選択を取り入れてきた。解説の際の話を聞いても、分析能力が秀でていることを感じる。

なお、今夜20時から放送する「熱狂Mリーグ」では、その勝又の深い読みを紹介する予定です。

http://live.nicovideo.jp/gate/lv317829837

「熱狂Mリーグ」は、毎週水曜の夜に木原さんと生配信している番組で、Mリーガーたちの凄い選択を短い時間で深く紹介する番組です。木曜まで待てない人は是非一度ご覧になってください。

 

続いて魅せたのが、パイレーツ・小林剛だ。

まず、これは次の東2局1本場の全員の手牌(6巡目)だが、あなたならどの手牌を持ちたいと思うだろうか。

ドラ・

東家・魚谷

 

南家・瀬戸熊

 

西家・勝又

圧倒的に魚谷の手牌が打点、受け入れ共に優秀。しかし、他の2人もイーシャンテンでツモ次第では破壊力のある手になる。その一方、小林は…

この手。ドラなし役なし、そして1メンツもない。枯れ果てた荒野のような手牌だ。

しかし、周りがテンパイしない中、小林は安全牌を抱えながらも

ここまで手牌を進めてきた。

そして、次の巡目に勝又の切ったをチー。

当然切る牌は…

不朽のコバシステム!!打だ。

受け入れ枚数はツモでのテンパイを逃してしまう分、かなり減る。

しかしもともと価値の低い手牌、こんな深い巡目でブクブクに構えていては、リーチを受けた時点で押してもオリてもマイナスの選択になってしまう。

こうして小林は

1000点をアガり切ることに成功。今までこういうアガリを何回紹介したかわからないが、リスクを最小限に抑えたまま、他3人の大物手を捌く値千金のアガリをものにした。

 

続いての東3局・3巡目のことだった。

ドラ3のチャンス手で何を切るか。

私の第一感は打でタンヤオスキー。しかしほんのりマンズの場況がよく、イーシャンテンは維持すべきなのかもしれない。

じゃあ孤立牌のか、いや小林の切ったのは

だった。イーシャンテンは維持しておき、の周りを引いたらタンヤオに向かう柔軟な選択。すぐにをチーして、2軒リーチにも真っすぐ勝負し…

マンガンのアガリ。これ以上はちょっと負けられないパイレーツにとっては大きなアガリとなった。

最後に紹介するのは僅差の3着目で最後の親を迎えたこの男、

瀬戸熊直樹だ。なぜこんな渋い表情をしているかというと、南3局の親番で手にしたのが

九種九牌だったからだ。しぶしぶ打から切り出すが、内心はがっくりだろう。

さらに試練は続く。

魚谷から3巡目リーチが入ったのだ。

直後、一応10種になったのだが、さすがにここからは押せない。現物を切っていく。

こうして迎えた10巡目

現物のをツモってきた瀬戸熊は、ふいに通っていないを切った。

のノーチャンス(4枚切れている)ではあるが、生牌だ。

しかし、ヒントは魚谷の捨て牌にあった。

←リーチ

たった3牌だが、この捨て牌の与える情報は大きい。

いきなりカンチャンターツを内側から払っているところから、チートイツ、もしくは好形リーチと読むことができる。チートイツだとしたら待ちより宣言牌ので待つだろう。シャンポン待ちを完全に否定することはできないが、その場合はリャンメン変化と河が目立たないことを踏まえてという切り順になりそうだ。

微妙にテンパイも見えてきたので危険度の低いこれくらいの牌なら切ってのくっつきに期待しよう、ということだろう。

次に手が止まったのはここだ。

手牌に安全牌はしかない。

瀬戸熊は考え、そして状況を何度も確認し、最後はここまで育てた手牌を崩すのを名残惜しそうに

その唯一のを抜いた。次に手詰まるかもしれない、茨の道をいく選択だ。

しかしチートイツが匂う以上、1枚切れのも切りづらい。こうして

次の巡目に手詰まってしまった。

を切るか…リーチ前には1枚切れている。仮に魚谷のリーチがチートイツだとして、生牌のではなく、1枚切れので待つだろうか?

セオリーでは最序盤は生牌で待つ方が有利とされている。しかし魚谷はどうするだろうか…いや、そんな不確定な相手のことを読もうとしてもわかったものじゃない。それなら2巡凌げる…という明確なメリットを持つ

を切った。辛い状況で、さらに血の滲むようなオリ選択。

…と思って見ていたが、魚谷が切ったに手が止まる。

これをチーして、ずっと切れなかったを勝負。

チートイだとして、よりよさそう(もしくは同等)な待ちはしかない。

超危険牌ということは痛いくらいわかっているが、チートイと断定はできない上、自分がテンパイなら見合う…ということだろう。

九種九牌から、さらに出来メンツを抜いた後に鳴き返してたどり着いた、珠玉のテンパイ。

流局して、親権を維持した。

しかし、私が一番驚いたのは次の一局だ。

この奇跡的なテンパイ劇を受けたあとだ、「流れ」を重んじる瀬戸熊からしたら「俺のターン!」と思っているのではないか。

そう思いながら見ていた7巡目、瀬戸熊は

役なしだがテンパイを果たす。

状況を言うと、魚谷がを赤含みでポンしている。

また、小林が第一打にドラのを打ち、それに合わせるようには3枚切られてしまった。

——普通なら…リーチといくのではないだろうか。

仕掛けている魚谷をはじめ、子の3人に対して牽制し、とりあえず足を止めたい。

そう考えるのが、そう普通だ。

を鳴きたかったのか、とにかく瀬戸熊はダマったのだった。

次に

をツモってテンパイ外し。打

そうこうしているうちに、軍師・勝又からリーチが入る。

これは勝又のイーシャンテンでの選択が素晴らしかった。

勝又はこのイーシャンテンから、なんとを切ったのだ。

普通はペンチャンを払う手牌だ。

この選択にも弱いながら理由が3つある。

・シャボ待ちになった際、が筋になりいい待ちになる。

・ほんのりソウズの場況と安全度が良い。

を切ってもツモはロスにならず、そういう意味では直接的ロスはだけで、それはも変わらない。

その選択がズバリハマり、強いリーチを打ったのだ。

しかし、私が目を疑ったのは、それを受けた瀬戸熊の選択である。

をツモってきた場面。

点棒状況をみてもらっての通り、瀬戸熊は3着目だ。

もう一度繰り返して言うと、

ラス前、瀬戸熊は3着目の親で、勝又はラス目だ。

なんで…

この場面で…

我慢ができるんだ。

瀬戸熊は表情を変えないまま、現物のを抜いた。

ドラも見えているなら、放銃しても安いことは多い。私は押した方が良いと思っているが、実際の損得はわからない。それ以前にリーチを打っていると思う。

そういう話ではなく、会心のテンパイでしがみつくように連荘した、最後の親だ。

なぜいとも簡単にオリることができる…?

チーム戦だからか。

クマクマスイッチが入っていないとみたか。

瀬戸熊は、多くを語らない。

対局前は、雑念が入らないように誰とも話さないそうだ。

性格が優しいだけに、話しかけられると答えてしまうし、スタッフがいると気を遣ってしまう。そうして対局に影響が出てしまってはよくない。

よく「人生を賭けた」という表現を使うプロがいるが、数%くらいは「でも麻雀だし」という気持ちがあるはずだ。しかし修行僧のような瀬戸熊は、全身全霊で目の前の麻雀に対し「人生を賭けて」勝負しているのだ。

結局、このオリが奏功したわけではないが、瀬戸熊は3着を死守した。

そして、トップはオーラスの親でマンガンをアガった勝又の元に転がり込んだ。

それにしても…

強烈すぎるだった。

最後の最後に。

そんな中、少し心配なのが魚谷侑未だ。

魚谷は東1局の3巡目に

 ドラ

から、を1鳴きしている。

その後、安牌を抱えないままブクブクに手を進め、結果的に放銃してしまった。

供託を取りにいったのかもしれないが、これだけの手材料で3巡目、慌てずともメンゼンで中~高打点を狙う方が安定しないだろうか?

上家である親の小林の捨て牌を見ると役牌からビシバシ切り出しているので、そこそこは整っていそうだ。少なくとも安牌を持たず手を進めるのはデンジャラスに感じる。

以前、魚谷にインタビューをした際に

「私の打ち方は勝たないと批判されることはわかっているので…」

と悲痛な思いを語ってくれた。

と、同時にこうも言っていた。

「Mリーグで打った感触として、周りのテンパイが想定よりも平均して3巡くらい早い」

たしかにこの日も、たくさん仕掛けては、先制リーチを受けて困る局面が多かったように思う。次の局のこのポンはどうだろうか。

親でを一鳴きしてカンの1500にとった。

これは先ほどよりはポン寄りになるとは思うが、最序盤であることと上家から出たことをふまえ、ワンスルーして高打点を狙う選択肢があってもよいのかなと思う。

結果が伴わないと、悪い部分が目立ってしまうのは仕方ない。

ただ、魚谷自身が感じたズレが本当なら…このままの打ち方でよいのかは心配なところだ。

というわけで本日は4人の打ち手を取り上げてみた。

今後は総力戦となり、熱い対局も増えるだろう。今から1か月が一番面白い時期なのかもしれない。

 

ZERO(ゼロ)

麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で『傀に学ぶ!麻雀強者の0秒思考』を連載中。

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